日本大百科全書(ニッポニカ) 「中国共産主義青年団派」の意味・わかりやすい解説
中国共産主義青年団派
ちゅうごくきょうさんしゅぎせいねんだんは
中国共産党内の派閥の一つ。中国共産党の下部組織で、共産主義青年団(共青団)の幹部出身者を中心に構成される。団派ともいう。1984年から約2年間共青団のトップである中央第一書記を務めた胡錦濤(こきんとう)が、1992年にポスト江沢民(こうたくみん)として最高指導部入りを果たすと、共青団時代の自分の部下を次々と抜擢(ばってき)し、一大派閥を形成した。おもなメンバーに李克強(りこくきょう)、李源潮(りげんちょう)、劉延東(りゅうえんとう)(1945― )、令計画(れいけいかく)(1956― )、周強(しゅうきょう)(1960― )、胡春華(こしゅんか)(1963― )などがいる。彼らはさらに自らの部下を抜擢し、省、市レベルの主要ポストの多くも押さえており、共産党内でもっとも結束力の強い派閥といわれる。共青団出身者と、胡錦濤に近い房峰輝(ほうほうき)(1951― )、張陽(ちょうよう)(1951―2017)ら軍指導者らとをあわせて胡錦濤グループとよばれることもある。貧富格差の是正や内陸重視の政策を打ち出しており、経済政策で発展至上主義を推進する上海閥(シャンハイばつ)とよく対立する。2012年秋の党人事で、共青団派から党最高指導部(定員7人)入りを果たしたのは李克強1人にとどまり、大きな敗北を喫したといわれた。同2012年春、強引な政治手法で太子党の重鎮、薄熙来(はくきらい)(1949― )を失脚させたことで党内の反発を買ったことなどが原因といわれる。
[矢板明夫 2019年4月16日]