乙支文徳(読み)おつしぶんとく(英語表記)Ǔl-chi Mun-dǒk

改訂新版 世界大百科事典 「乙支文徳」の意味・わかりやすい解説

乙支文徳 (おつしぶんとく)
Ǔl-chi Mun-dǒk

朝鮮高句麗の6世紀末の武将生没年不詳。戦術はもとより詩文にも優れた。《隋書》によれば,煬帝(ようだい)が遠征軍を高句麗に派遣するや,文徳は偽って身を隋軍に投じて軍勢をさぐった。実戦においても,隋軍をあざむき大いにこれを敗走せしめ,初め30万5000の隋軍は,遼東に帰還した者わずかに2700であったという。朝鮮では救国英雄として今もたたえられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「乙支文徳」の意味・わかりやすい解説

乙支文徳
いつしぶんとく

生没年不詳。6世紀末から7世紀初めの高句麗(こうくり)の将軍。戦術はもちろんのこと、詩文にも優れた才能を発揮した。『隋書(ずいしょ)』によれば、隋の煬帝(ようだい)が宇文述(うぶんじゅつ)、于仲文(うちゅうぶん)を将軍とする高句麗遠征軍を送る(612)と、文徳は初め身を偽って隋軍に投じて軍勢を探り、実戦においては隋軍を欺き、高句麗の危機を救った。そのため初め30万5000人の隋軍も、遼東(りょうとう)に帰還できた者はわずかに2700人であったという。今日でも救国の英雄とたたえられている。

浜田耕策]

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