日本大百科全書(ニッポニカ) 「乳牛飼育用機械」の意味・わかりやすい解説
乳牛飼育用機械
にゅうぎゅうしいくようきかい
乳牛を飼うには、粗飼料(繊維質の牧草など)、濃厚飼料(穀類や粕(かす)など)、塩、水を与える。そして排泄(はいせつ)物を処理する。また子を産んだあとは毎日搾乳をする。
牛舎は、つなぎ飼い牛舎と放し飼い牛舎に大別でき、さらに放し飼い牛舎は、1頭ごとに柵(さく)で仕切った休息場を設けたフリーストールfree stallと、休息場を仕切らないフリーバーンfree barnに分けられる。方式により、使用機械に違いがある。
これらに必要な機械類のおもなものを次に示す。
サイロアンローダーは、タワーサイロ(塔型サイロ)に貯蔵してあるサイレージ(サイロのなかで乳酸発酵させた飼料)を取り出すときに用いられ、上部から取り出すトップアンローダーと下部からかき出すボトムアンローダーがある。バンカーサイロ(平面型サイロ)ではトラクター用のローダーやサイレージカッターsilage cutterを使って取り出す。
つなぎ飼い牛舎や放し飼い牛舎で餌を容器や飼槽に配って与えるのに給飼車が使われる。一輪車、リヤカー、自走車、レール走行によるものなどがある。各種コンベヤーを組み合わせた自動給飼装置(バンクフィーダーbunk feeder)や餌の重さを量ることができる給餌車もある。水は給水器で与える。放牧する場合は牧柵を張り、水と塩を与える。
糞尿(ふんにょう)処理には多くの種類の機械装置がある。処理方式は、糞と尿を分離するもの(固液分離方式)と、いっしょに扱う方式(スラリー方式)に分かれる。牛舎から糞尿を取り出すのに、手作業用のフォーク、動力機ではトラクターブレード、バケットローダーなどが用いられる。装置ではバーンクリーナーbarn cleanerやバーンスクレーパーbarn scraperなどがある。固液分離方式はバーンクリーナーでの分離や固液分離機が使われる。分離した固形分は発酵堆肥(たいひ)化や乾燥などを行い、肥料として土地に戻す。スラリー方式ではスラリータンクに貯蔵し、肥料として土地に戻す。
搾乳にはミルカー(搾乳機)を用いるが、バケット型、パイプライン型、ミルキングパーラー型、無人で搾乳を行う搾乳ロボットに大別される。バケット型は小さなバケットに搾った牛乳を入れる。パイプライン型は搾った牛乳をパイプラインでバルククーラー(貯乳タンク)などの冷却装置まで搬送する。両者ともつなぎ飼い牛舎で使われる。放し飼い牛舎ではミルキングパーラー(牛舎とは別の搾乳室に設置した搾乳機器)が使われ、牛をミルキングパーラーまで連れていって搾乳する。フラットバーン(短いパイプラインを使ったパーラー)、アブレスト(フラットバーンの改良型)、ヘリングボーン(搾乳ストールを斜めに配置したパーラー)、タンデム(搾乳ストールを直線に配置したパーラー)、パラレル(搾乳ストールを直角に配置したパーラー)、ロータリ(搾乳ストールを回転テーブルに設けて1回転の間に搾乳する)などの型式がある。搾った乳はバルククーラーなどに入れて蓄える。
[原 令幸]