日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイロ」の意味・わかりやすい解説
サイロ
さいろ
silo
サイレージをつくるため、材料の牧草や青刈り作物など高水分の飼料を詰めて乳酸発酵させ、貯蔵する構造物。構造上必要な条件は、気密性が保持できること、構築材料とくに内壁の材料は耐酸性であること、排汁口(溝)が設けられ、サイレージの詰め込み、取り出し作業が容易で、しかも変質が防止できることなどである。したがってサイロは、乾草をつくりにくい地域に多く建設される。日本のサイロは、乳牛の飼育頭数の急増に伴って、第二次世界大戦後に増加した。
[西田恂子]
構築材料
コンクリートは強度も強く、価格も比較的安く、サイロのもっとも代表的な構築材料としてあげられるが、酸に弱く内壁が侵されやすい。スチールは気密性の保持できる形状に加工しやすく、厚さ3~6ミリメートルの薄板で十分強度も強く自重が軽くてすむが、酸に弱く、耐酸施工を必要とするので高価になる。プラスチック材料は気密性が保持しやすく、耐酸性で軽くて扱いやすいので、塩化ビニルやポリエチレンのシートが各種サイロの被覆材などに用いられ、サイレージの品質向上に役だっているが、破れやすい欠点がある。繊維強化プラスチック(FRP)はサイロの材料として最適であるが、耐久性に多少問題があり、高価でもある。そのほか、小形角型サイロ用のコンクリートブロックや、れんが、石材、木材などがある。
[西田恂子]
種類
形状、設置位置によって、垂直型と水平型、地上式と地下式または半地下式などに区分される。次におもな例をあげる。
(1)タワーサイロ 代表的な垂直型の地上式大形サイロで、コンクリート製の円型のものは直径1.5~6メートル、高さ5~18メートル(直径の2.5~3倍)、取り出し方式は上部からと下部からとある。
(2)気密サイロ スチール、FRP製で機能的にもっとも優れ、直径3~7.7メートル、高さ10~24メートルで、上部の詰め込み用と下部の取り出し用のハッチを閉鎖すればサイロ内の気密が保持される。
(3)バンカーサイロ 代表的な水平型サイロで、サイレージの自由採食を目的としたものである。地上面または地下に穴を掘って底側面をコンクリートで構築し、原料草をトラクターなどを使って十分圧縮して詰め込み、上部をビニルシートで被覆する。
(4)トレンチサイロ 地下式の水平型サイロで、地面に溝を掘り、ビニルシートで完全に被覆して原料草を詰め込む簡単な補助サイロといえる。
(5)スタックサイロ 地上式の水平型サイロで、堆積(たいせき)した原料草を地面と上面で完全にビニルシートで被覆し密封する。短期間の貯蔵に使われる。
配合飼料の原料として海外より輸入される穀類などを一時貯蔵する容器もサイロという。燻蒸(くんじょう)、換気装置などが設備され、虫やネズミの害を防ぎ良好な状態で貯蔵できる。
[西田恂子]