翻訳|silo
サイレージをつくるためにその材料となる生草類や根菜類などの多汁質飼料を詰め込んで乳酸発酵させる容器。サイロは畜産農家にとって,冬季用の保存飼料をつくるための大切な設備であるが,とくに気象条件が悪くて乾草をつくりにくい地域に多くつくられる。日本では1887年に群馬県の神津牧場に最初のサイロが建設されたが,その普及は昭和になって有畜農業が奨励された後である。第2次世界大戦後,乳牛の飼育頭数が急増し,草類の増産が行われるにつれてその建設は著しく多くなった。
サイロは土地の条件,飼養する家畜の種類と頭数,さらに詰込み材料の種類と量などによって,大きさと型が決められる。しかしいずれのサイロでも,サイレージ調製の原理が詰込み材料に付着した乳酸菌を適当な条件下で増殖させ,その発酵によって生じた乳酸が他の腐敗分解菌の繁殖を阻止して保存性を高めることであるから,とくに気密性の高いことが必要である。サイロには地上式と地下式があるが,前者は建設が容易であるが,外気の影響をうけやすい欠点があり,後者は外気の影響をうけにくいが,地下水の浸入のおそれがある。そのため日本では立地条件にあわせて両者の利点を組み合わせた半地下式の円筒サイロが普及している。地上式には円筒サイロ,タワーサイロ,スタックサイロ,バンカーサイロがあり,地下式もしくは半地下式には円筒サイロやトレンチサイロがある。建設材料はふつうコンクリートが多いが,コンクリートブロック,プラスチック,鋼なども用いられ,また条件のよいところでは素掘りのままでサイロとすることもある。日本に多い半地下式小型サイロは,直径1.5~1.8m,深さ2.5~3mの円筒形で3~5t程度のサイレージができる。タワーサイロは大規模な飼養を行うところにつくられているが,なかにはサイロの内容が外気に直接ふれないような構造になった気密サイロもある。これを用いれば貯蔵中の養分の損失はきわめて少ない。一方,スタックサイロは地上に材料を山積みしてカバーをかけて発酵させるので,建設費はほとんどいらないが空気の遮断が不十分になりやすく,養分の損失が著しく大きい。バンカーサイロは底面をコンクリートにし,長い壁を両面に備え,その中に材料を詰め込んでサイレージをつくるもので,開封後は家畜に自由採食させることもできる。トレンチサイロは地中に細長い溝状の穴を掘り,これに材料を詰め込むもので,大きいものではトラクターで踏圧する。建設費は比較的安く,作業も簡単であるが,開封後雨の浸入のおそれがあり,また取出し面の変敗が多い。サイロがあれば,生草の不足する冬季に多汁質飼料が供給できるのみでなく,飼料作物の栽培の回転を早め,畑地の利用率が増大できる。また,乾草の場合より養分の損失も少なく貯蔵容積が小さくてすむ。飼料作物が最大の養分を生産する時期を知って,一時に刈り取ってサイロに詰め込むと,耕地から最大の養分収量をえることができるため,畜産経営上きわめて好ましい。そのため最近では年間を通してサイレージを給与するとともに,サイロに物上げ・運搬機械アンローダーをとりつけ,サイレージの取出し作業の省力を行うところも増えつつある。
執筆者:宮崎 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
サイレージをつくるため、材料の牧草や青刈り作物など高水分の飼料を詰めて乳酸発酵させ、貯蔵する構造物。構造上必要な条件は、気密性が保持できること、構築材料とくに内壁の材料は耐酸性であること、排汁口(溝)が設けられ、サイレージの詰め込み、取り出し作業が容易で、しかも変質が防止できることなどである。したがってサイロは、乾草をつくりにくい地域に多く建設される。日本のサイロは、乳牛の飼育頭数の急増に伴って、第二次世界大戦後に増加した。
[西田恂子]
コンクリートは強度も強く、価格も比較的安く、サイロのもっとも代表的な構築材料としてあげられるが、酸に弱く内壁が侵されやすい。スチールは気密性の保持できる形状に加工しやすく、厚さ3~6ミリメートルの薄板で十分強度も強く自重が軽くてすむが、酸に弱く、耐酸施工を必要とするので高価になる。プラスチック材料は気密性が保持しやすく、耐酸性で軽くて扱いやすいので、塩化ビニルやポリエチレンのシートが各種サイロの被覆材などに用いられ、サイレージの品質向上に役だっているが、破れやすい欠点がある。繊維強化プラスチック(FRP)はサイロの材料として最適であるが、耐久性に多少問題があり、高価でもある。そのほか、小形角型サイロ用のコンクリートブロックや、れんが、石材、木材などがある。
[西田恂子]
形状、設置位置によって、垂直型と水平型、地上式と地下式または半地下式などに区分される。次におもな例をあげる。
(1)タワーサイロ 代表的な垂直型の地上式大形サイロで、コンクリート製の円型のものは直径1.5~6メートル、高さ5~18メートル(直径の2.5~3倍)、取り出し方式は上部からと下部からとある。
(2)気密サイロ スチール、FRP製で機能的にもっとも優れ、直径3~7.7メートル、高さ10~24メートルで、上部の詰め込み用と下部の取り出し用のハッチを閉鎖すればサイロ内の気密が保持される。
(3)バンカーサイロ 代表的な水平型サイロで、サイレージの自由採食を目的としたものである。地上面または地下に穴を掘って底側面をコンクリートで構築し、原料草をトラクターなどを使って十分圧縮して詰め込み、上部をビニルシートで被覆する。
(4)トレンチサイロ 地下式の水平型サイロで、地面に溝を掘り、ビニルシートで完全に被覆して原料草を詰め込む簡単な補助サイロといえる。
(5)スタックサイロ 地上式の水平型サイロで、堆積(たいせき)した原料草を地面と上面で完全にビニルシートで被覆し密封する。短期間の貯蔵に使われる。
配合飼料の原料として海外より輸入される穀類などを一時貯蔵する容器もサイロという。燻蒸(くんじょう)、換気装置などが設備され、虫やネズミの害を防ぎ良好な状態で貯蔵できる。
[西田恂子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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