争いの木(読み)あらそいのき

改訂新版 世界大百科事典 「争いの木」の意味・わかりやすい解説

争いの木 (あらそいのき)

特定の木を望見して,その名を言い争うという伝説。例はさほど多くない。《新編武蔵風土記稿》に,東京田端白鬚(しらひげ)社の神木遠くから望むと松のように見え,松だ杉だと言い争うということで〈争いの杉〉と呼ぶと記されている。またこの杉は,源頼朝の奥州征伐の際に畠山重忠が松だといって従臣と争ったともいう。同じ田端の道灌山に同様の伝説がある。むかし,太田道灌が一人の侍と遠くにある木を眺めて,杉だ松だと争った。近づいて見ると杉であった。侍はこれを恥じて自害したという。また一説に,この争いの杉は木の幹が二つに分かれていて互いに争うように見えるので,この名があるともいう。神木や著しく形状の異なる樹木にこうした伝えがあるのは,その木が特別視されていたからである。かつてはそれによって神意を占ったものと考えられている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

関連語 英雄

今日のキーワード

南海トラフ臨時情報

東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...

南海トラフ臨時情報の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android