神木(読み)しんぼく

日本大百科全書(ニッポニカ)「神木」の解説

神木
しんぼく

広義には聖視されている樹木。一般には神社の境内などにあって、注連縄(しめなわ)などを張り巡らし、崇敬されている樹木。松、、檜(ひのき)などの常緑樹が多く、大木が多い。神木思想の根底には、日本人の緑樹崇拝の思想があるといえよう。大木ではないが、「峰の三つまた、谷の二又の木」などといって、存在地点・形態が際だって他の樹木と異なって目だつとき、これを神木としている所もある。東北地方では、このような異形の木を、山の神の遊び木、天狗(てんぐ)の住んでいる木として神聖視している。静岡県西部地方では、根元は1本で途中から二又に分かれている大木を、ヒトオシの木とよび、そこを通して太陽が見えるといって、神木としている。そのほか各地に伝承される矢立(やたて)杉、弘法(こうぼう)大師(空海)や日蓮上人(にちれんしょうにん)などの高僧の杖立(つえたて)杉や影向(ようごう)の松、子供を育てたという乳母銀杏(うばいちょう)など、いずれも神霊の宿る木として崇(あが)められているものである。ある時期、太鼓の音がるという音の出る木なども、他の樹木と異なり、神の依代(よりしろ)として、神降臨のあることを信じたものである。日本人の神木思想は、門松(かどまつ)や盆の灯籠(とうろう)松、柱松などのように、年中行事や氏神の祭りに1本の木を立てて神事を行う習俗の基盤となっているものである。また、神木入洛(じゅらく)といって、平安末期・中世には、奈良の興福寺僧兵が、春日(かすが)大社の神体になぞらえた(さかき)の神木を奉じて朝廷に強訴したりした。

[鎌田久子]

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精選版 日本国語大辞典「神木」の解説

しん‐ぼく【神木】

〘名〙
① 神社の境内や神域にある樹木の総称。
※性霊集‐序(835頃)「神木霊草之区、耳目所経未嘗不一レ究」 〔班固‐西都賦〕
② 神霊の宿っている木。多く榊(さかき)をいう。神樹。〔名語記(1275)〕
③ 神社の境内にあって、その神社にゆかりがあるものとして、特に注連(しめ)などを張ったり、を設けたりしてまつってある樹木。三輪神社の杉、北野天満宮の梅、熊野神社の梛(なぎ)などの類。
※筑紫道記(1480)「同じ御神ながら筥崎にては神功皇后と申。爰には聖母と号し奉る。神木も筥崎はまつ。ここは杉なり」
④ 特に、奈良の春日大社で、御神体になぞらえた木。春日の神木と称され、強訴(ごうそ)の際に捧持されたり、田地などの点定(てんじょう)にあたり、その四隅に立てられたりした。
※百練抄‐寛治七年(1093)八月二六日「興福寺大衆率春日神民、集会勧学院。捧鋒神木、随身鏡鈴
平家(13C前)五「いささかの事にも春日の神木、日吉の神輿などいひてみだりがはし」

かん‐き【神木】

〘名〙 (「かむき」とも表記) 神の降臨する神聖な木。神体と考えられる木。を触れることは罪とされた。しんぼく。
※万葉(8C後)四・五一七「神樹(かむき)にも手は触るといふをうつたへに人妻といへば触れぬものかも」

かむ‐き【神木】

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「神木」の解説

神木
しんぼく

神が依りつくとして神聖視される樹木。古くから,神は何か物に依りついて具現化すると考えられていた (→依代 ) 。そこで神木を神の表徴とみなしたり,樹木に神霊が宿ると考え,畏怖し,神聖視してきた。普通神木になる木には,松,すぎ,くすのきなどが多く,またふたまたの木などのように,外見上の形質が特異なものもある。神社では,大木などに注連縄 (しめなわ) を張って神木とする風習がある。さらに神社の森そのものを神木とみなすこともあり,樹木が信仰生活と密接な関係にあったことを例証している。なお,神木は樹木そのものを信仰対象とする樹木崇拝とは区別される。

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百科事典マイペディア「神木」の解説

神木【しんぼく】

神社の境内などにあって神聖視される樹木。勧請木(かんじょうぼく)・神依木(かみよりぎ)とも。普通は老齢巨木に〈しめ〉を張り,また柵(さく)などをめぐらし,神の降臨する木と信じられている。熊野の竹柏(なぎ),稲荷(しるし)の杉,太宰府天満宮の飛梅などがそれで,中世には春日(かすが)大社の神木は,それに鏡をかけて強訴(ごうそ)の時のシンボルとなった。

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動植物名よみかた辞典 普及版「神木」の解説

神木 (サカキ)

学名Cleyera japonica
植物。ツバキ科の常緑高木,園芸植物

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世界大百科事典 第2版「神木」の解説

しんぼく【神木】

神社の境内や神域にあって神聖視される樹木をいう。霊木,勧請木(かんじようぼく),神依木(かみよりき)ともいわれる。神域全体の樹林を指す場合もあるが,多くは祭神由緒に関係の深い樹種や老樹巨木に標縄(しめなわ)を張り柵をめぐらせて標示する。古来神霊は樹木に降臨するとの観念から,なんらかの奇瑞伝承をもつか畏怖の印象を抱かしめるたぐいの特殊な外見をもち,伐採や不浄にはたたりをもたらすとされる場合が多い。松,杉,ヒノキなどの常緑樹が一般的だが,神社によって特定の神木がある。

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世界大百科事典内の神木の言及

【木】より

…樹冠の形は種によって異なっているので,森林の表面の外観(林相)は森林の構成種によって異なっている。 木は古来人間の生活や文化と密接に関係しており,洋の東西を問わず神木などになって祭祀にかかわりをもつものが多い。日本では府県の木や花を指定して地方の性格を代表させることもあり,天然記念物になっている名木も多い。…

【樹木崇拝】より

…沖縄の御嶽(おたけ)にはイビと呼ばれる神域があり,高くそびえるクバの木に神が降臨する。神社の境内にはしめ縄で囲んだ神木がある。いずれも神威の根源としては神・霊の斎(いつ)く依代(よりしろ)としての観念が横たわっている。…

【未進】より

…もちろん,領主は年貢などの未進を簡単に認めたのではなく,未進があれば〈付使〉といって使を派遣して催促したし,〈発向〉といって武力で弾圧することもあった。興福寺や春日社では未進のある田地に神木をたてて田地の耕作を停止させたり,近世初頭には妻子や牛馬を差し押さえたりした。また江戸時代には未進を防ぐために,年貢などを村単位で納めさせ,個々の百姓の未進を村で負担させている。…

※「神木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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