日本大百科全書(ニッポニカ) 「二重価格制」の意味・わかりやすい解説
二重価格制
にじゅうかかくせい
double price system
同一の財・サービスに対して異なった二つの価格が設定されるのが二重価格制である。異なった買い手に別の価格で販売されるという形の二重価格制は、一種の価格差別であり、それが可能になるためには、別の価格で買った買い手相互間で転売できないような財・サービスでなければならない。もし安く買った人が高い価格の買い手に転売することができるとすれば、二重価格制は崩れてしまうからである。二重価格制は、公共性の強い財・サービスについて政策的な配慮から採用されるもの、市場が大口の需要者と小口の需要者に分断されてそれぞれの単位当りの取引費用が異なる場合に、それに応じて価格を設定するという形で採用されるもの、あるいは細分化された市場でそれぞれの需要の価格弾力性が異なるとき、独占的な企業がそれぞれの市場で利潤を最大化するために採用するもの、などがある。1995年(平成7)まで実施されていた、日本の食糧管理制度のもとでの二重米価は、これと形は異なるが一種の二重価格制であった。
[志田 明]