改訂新版 世界大百科事典 「価格弾力性」の意味・わかりやすい解説
価格弾力性 (かかくだんりょくせい)
price elasticity
人々が一定期間に購入(需要)したいと望む財の数量,あるいは販売(供給)したいと考える財の数量は,その財の価格に依存している。この財の価格の変化割合と,それによる数量の変化割合の関係を記述・測定するのが価格弾力性という概念である。A.クールノーやJ.S.ミルの著作の中にも同種の考えはみられるが,需要量の%変化(⊿q/q)を価格の%変化(⊿p/p)で除したものを〈弾力性elasticity〉と最初に名づけたのはA.マーシャルである。ある財の需要の価格弾力性は,その財に対するよい代替財が存在するとき大きくなるため,一般には一企業の直面する需要の価格弾力性は,産業全体のそれより大きい。逆に適当な代替財の存在しない酒などの嗜好品や,消費者の予算の中で支出額の割合の小さな財(たとえば食塩)の価格弾力性は小さい。価格弾力性は価格を変化させることによって,収入がどう変化するかという情報を与えるため,非弾力的な需要に直面している売手が,需要が弾力的になる点まで価格をつり上げることによって,総収入を増加させようとするときの重要な指標となる。
→弾力性
執筆者:猪木 武徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報