大口(読み)オオクチ

デジタル大辞泉 「大口」の意味・読み・例文・類語

おお‐くち〔おほ‐〕【大口】

《「おおぐち」とも》
大きな口。大きく開けた口。「大口を開けて笑う」
おおげさなことをいうこと。偉そうにいうこと。「大口をたたく」「大口を利く」
売買や取引などで、金額が多いこと。「大口の寄付」⇔小口こぐち
茶道具の一。柄のない片口かたくち状の置き水指し。
大口ばかま」の略。
猥談わいだん
「まして色の道…―いふよりほかはなし」〈浮・一代女・一〉
[類語]大きい大きな大いなるでかいでっかいどでかい馬鹿でかい大振り大形大柄大作り大粒粗大肥大嵩張かさばビッグでかでか巨大ジャンボジャイアントマクロマキシマムマンモスキングサイズ過大豪壮雄大壮大大規模壮麗広壮極大最大特大強大超弩級ちょうどきゅう大掛かり大仕掛け大大的

おおくち【大口】[地名]

鹿児島県北部にあった市。平成20年(2008)菱刈町と合併して伊佐市となる。→伊佐

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精選版 日本国語大辞典 「大口」の意味・読み・例文・類語

おお‐くちおほ‥【大口】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「おおぐち」とも )
    1. [ 一 ]
      1. 大きな口。大きくあいた口。
        1. [初出の実例]「この磐(いはほ)を見るに、誠に龍の大口を明きたるに似たり」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)二)
      2. みだらな話。猥談(わいだん)。おおぐちばなし。
        1. [初出の実例]「ふんどしかきながら女中同前の男、心のうき立程、大口(オホグチ)いふより外はなし」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)一)
      3. おおげさなことを言うこと。言いたいほうだいに言いちらすこと。
        1. [初出の実例]「王充と云者あり〈略〉東の方は函谷関とぢてふうじかためてをかうと云たぞ、大口なことぞ」(出典:玉塵抄(1563)一九)
      4. 売買や取引などの額や数がまとまって多いこと。⇔小口
        1. [初出の実例]「四十人前といふ前茶屋の大口が焼き上って、二階の客にも十二組までお愛そを済ましたので」(出典:鱧の皮(1914)〈上司小剣〉一)
      5. 茶道具の一種。片口に似て、柄がなく口が広いもの。釜や水指しに水を入れるのに用いる。
    2. [ 二 ] ( 「おおくちばかま(大口袴)」の略 ) 裾の口が広い袴をいう。大口の袴。
      1. 下袴の一種。束帯の時に表袴(うえのはかま)の下のはきものとして用いる。平絹(へいけん)・精好(せいごう)の類で仕立てて、赤染めを普通とするが、老人は白のままとした。赤大口。赤袴。
        1. [初出の実例]「おほぐち、またながさよりは口ひろければ、さもありなん」(出典:枕草子(10C終)一三四)
      2. 下袴の一種。指貫(さしぬき)や直垂(ひたたれ)の袴の下にはく。前面を精好、後面を大精好(おおせいごう)で仕立てて、後腰(うしろごし)を張らせて着用する。込大口(こみおおくち)。後張(うしろばり)の大口。風流(ふりゅう)の時は上の袴を省略して用い、能装束の着用にその様式を伝えている。
        1. 大口<b>[ 一 ]</b><b>[ 二 ]</b><b>②</b>
          大口[ 一 ][ 二 ]
        2. [初出の実例]「さまざまの花をつけて、大くちを着て、田楽つかうまつる」(出典:高倉院厳島御幸記(1180))
      3. 童形装束で半尻(はんじり)所用の時にはく袴。前面を大精好、後面を精好で仕立てる。前張(さいばり)の大口。前張。
      4. 能装束の一つ。後部を左右に強く張った袴。生絹でつくる。生地の色で、白大口、緋大口、緋以外の色を地とする色大口、模様大口などに分けられ、大臣・僧・武将・女など、それぞれの役柄によって使い分けをする。
        1. [初出の実例]「脇の能、大臣には、先は、上下水干成べし。つれ大臣は大口也」(出典:申楽談儀(1430)能の色どり)
      5. 歌舞伎の衣装の一つ。能装束からとった袴。能の形式を模した松羽目物(まつばめもの)に多く用いられる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      6. 股引き、パッチをいう、演劇社会の楽屋言葉。
  2. [ 2 ] 鹿児島県北部の地名。宮崎、熊本両県に通じる交通の要地で、江戸時代は島津氏の直轄地。牛尾は金山の町として栄えたが、現在は閉山。昭和二九年(一九五四)市制。

おおぐちおほぐち【大口】

  1. 姓氏の一つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大口」の意味・わかりやすい解説

大口(鹿児島県の旧市名)
おおくち

鹿児島県北部にあった旧市名(大口市)。現在は伊佐(いさ)市の北西部を占める地域。旧大口市は大口盆地の中心都市。1954年(昭和29)大口町、山野町、羽月(はつき)村、西太良(にしたら)村が合併して市制施行。2008年(平成20)伊佐郡菱刈(ひしかり)町と合併、伊佐市となった。川内川(せんだいがわ)上流の盆地で周囲は凝灰岩、シラスからなる山地。JR水俣(みなまた)、栗野駅からバスがある。国道267号で久七(きゅうしち)峠(地元では「くしち」とよぶ)を越えると人吉(ひとよし)市に至る。歴史が古く、縄文、弥生(やよい)、古墳時代の遺跡が多い。中世、菱刈、相良(さがら)、島津の3氏が領有を争ったが、戦国時代末期に島津氏に帰した。江戸時代には、島津氏は直轄の麓(ふもと)(外城(とじょう))を大口に置いたほか、周囲3か所にも設置し、肥後(熊本県)に対する北辺の守りを固めた。国の重要文化財の祁答院家住宅(けどういんけじゅうたく)は、江戸中期の郷士(ごうし)の武家屋敷の姿をそのまま残している。

 農業が基幹産業で、米の生産が多く伊佐米の産地として知られるほか、最近、ブタ、肉牛の畜産の伸びが著しい。宮人(みやひと)のジャパンファームは、常時6万頭のブタを飼育している。鉱業は牛尾(うしお)、布計(ふけ)に金山があったが閉山した。史跡や景勝地が多く、郡山八幡(こおりやまはちまん)神社、白木神社や曽木(そぎ)の滝、十曽(じっそう)池、奥十曽渓谷などがある。

[平岡昭利]

『『大口市郷土史研究 1・2集』(1961、1963・大口市)』『『大口市十年誌』(1965・大口市)』『『大口市郷土誌』上下(1978、1981・大口市)』



大口(町)
おおぐち

愛知県北西部、丹羽郡(にわぐん)にある町。濃尾(のうび)平野北部、犬山扇状地上に位置する。1962年(昭和37)町制施行。第二次世界大戦前までは県下一のクワ畑率を誇る養蚕の村であったが、戦後は名古屋市からの工場誘致の成功で工業の町となった。とくに金属工業工作機械では全国的先進地である。江戸初期、尾張(おわり)藩の新田政策によって構築された入鹿(いるか)、木津(こっつ)、新木津の三大用水や五条川が貫流。名古屋鉄道犬山線が町のすぐ西側を走り、国道41号が通じ、名古屋市のベッドタウン化が進んでいる。面積13.61平方キロメートル、人口2万4305(2020)。

[伊藤郷平]

『宮川芳照著『大口町の歴史』(1967・大口町)』



大口(衣服)
おおぐち

公家(くげ)の衣服の一種。大口の袴(はかま)の略。束帯(そくたい)の表袴(うえのはかま)の下にはく四幅(よの)仕立てのもの。指貫(さしぬき)のような裾口(すそぐち)をくくる袴に対して、裾口の大きい袴という意。この袴の腰(紐(ひも))は、一続きになっており、片わなに腰の右側で結ぶことが本来であったが、強装束(こわしょうぞく)の流行によって、表袴と同じ位置で腰紐を結ぶことが困難になり、大口は逆の左側となった。地質や色目は、夏冬の区別はなく、紅染めによる赤い色の平絹で製するが、宿老(しゅくろう)(老人)は、ときに白の平絹を用いることもあった。

[高田倭男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大口」の意味・わかりやすい解説

大口
おおくち

鹿児島県北部,伊佐市の中・北部を占める旧市域。大口盆地の北部に位置する。1954年大口町,山野町,羽月村,西太良村の 4町村が合体して市制。2008年菱刈町と合体して伊佐市となった。中心市街地の大口は,中世には菱刈氏の支配下にあったが,永禄12(1569)年薩摩藩の領地となり,新納忠元が地頭となった。1877年の西南戦争では官軍と西郷軍の激戦地。地方官公庁の出先機関が集中。周辺の農村部では伊佐米の産が多く,タバコ,サツマイモも栽培。伝統産業として焼酎醸造業も盛ん。牛尾はかつて金を採掘。祁答院家住宅(けどういんけじゅうたく),八幡神社本殿は国の重要文化財に指定。南部に幅約 200m,落差 12mの曽木の滝があり,川内川流域県立自然公園に属する。

大口
おおぐち

大口袴 (おおぐちのはかま) ともいい,束帯着用の際の表袴 (うえのはかま) の内側にはく袴のこと。裾口が大きく開いているところからこの名があり,通常は表裏とも紅 (くれない) の平絹を用いるところから赤大口ともいった。一方,能装束での大口は,前面を精好織と呼ぶ精巧緻密な絹織地,後面は緯畝織 (ぬきうねおり) の堅い地質を用いた半袴のことで,色柄の相違によって,白大口,色大口,紋大口などの呼称がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「大口」の意味・わかりやすい解説

大口 (おおくち)

袴(はかま)の一種。裾口が広いところから出た名称。束帯(そくたい)の構成では表袴(うえのはかま)の下につける赤色平絹の切袴をいう。今日,能や歌舞伎に使用されている大口は,後部が平たくて堅く,角張っている。普通,白の精好(せいごう)でできたものが多く用いられ白大口という。ほかに緋大口(ひのおおくち),紫,浅葱(あさぎ),緑などの色大口,模様大口などがあり,それぞれ役柄や用途によってちがいがある。たとえば能では白大口,色大口は男女の役ともに用いるが,緋大口は女に,模様大口は公達などに用いる。歌舞伎では多く能をとり入れた《勧進帳》《土蜘蛛(つちぐも)》《船弁慶》などに用いる。
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大口[町] (おおぐち)

愛知県北西部,丹羽郡の町。人口2万2446(2010)。濃尾平野北東部に位置し,中央部を五条川が南流する。木曾川の沖積低地にあって,古くから米作を主体とする農業の盛んな地域であったが,1950年代後半から工場進出や住宅団地の建設が活発になり,さらに74年,東名高速道路小牧インターチェンジに直結する国道41号線が完成して,急速に工業化,都市化が進み,人口が急増した。
執筆者:


大口(旧市) (おおくち)

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百科事典マイペディア 「大口」の意味・わかりやすい解説

大口[市]【おおくち】

鹿児島県北部の旧市。1954年市制。川内川上流の大口盆地にあって牛尾,布計(ふけ)の2金山で栄えた。盆地は良質の伊佐米の大産地で,畜産加工も行われる。周辺の山地では木材切出し,製材が盛ん。千本桜の並木道で知られる忠元公園,曾木ノ滝公園がある。2008年11月伊佐郡菱刈町と合併,伊佐市となる。291.89km2。2万2119人(2005)。

大口【おおくち】

裾(すそ)口の大きい切袴(きりばかま)。平安時代,貴族の束帯構成で表袴(うえのはかま)の下に用いられた。赤の平絹(ひらぎぬ)で作られ赤大口ともいう。今日では能や歌舞伎に使用。
→関連項目

大口[町]【おおぐち】

愛知県北西部,丹羽(にわ)郡の町。犬山扇状地上にあり,江戸時代に水田化された。サボテンを特産。名古屋市から工場が進出,繊維・織機工業が行われ,住宅地化も著しい。13.61km2。2万2446人(2010)。

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