20世紀日本人名事典 「井上満」の解説
井上 満
イノウエ ミツル
昭和期のロシア文学者
- 生年
- 明治33(1900)年12月16日
- 没年
- 昭和34(1959)年5月14日
- 出生地
- 福岡県久留米市米屋町
- 学歴〔年〕
- 日露協会学校〔大正13年〕卒
- 経歴
- 大正9年福岡県の県費留学生としてハルビンの日露協会学校(後のハルビン学院)に入学、13年卒業。この間に北京で盲目の詩人エロシェンコと知合い、一緒に中国各地を旅行。昭和2年デボーリン「弁証法的唯物論への入門」を翻訳刊行。5〜11年駐日ソ連大使館に勤務、11年3月軍機保護法違反容疑で逮捕され、獄中でロシア文学を研究。14年から警察、軍部の監視付きでロシア文学の翻訳を発表した。戦後ソヴェト研究者協会、日ソ文化連絡会、ロシア文学者組合、日ソ翻訳出版懇話会の創立に参加、21年にはタス通信東京支局に勤め東京裁判の通訳を務めた。戦時中からゴンチャロフの研究につとめ、「日本渡航記」「ゴンチャロフ文芸評論集」「断崖」「平凡物語」を刊行。このほか、「ソヴェト文学全集」「ソヴェト小百科事典」などの編集、監修にも携わった。33年から「オブローモフ」の翻訳にかかったが、34年執筆中に倒れた。
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報