日本大百科全書(ニッポニカ) 「今堀日吉神社文書」の意味・わかりやすい解説
今堀日吉神社文書
いまぼりひよしじんじゃもんじょ
近江(おうみ)国延暦(えんりゃく)寺領得珍保(とくちんのほ)、今堀日吉神社に伝わる文書。1914年(大正3)から始まる『近江蒲生(がもう)郡志』の編纂(へんさん)過程で、編者の中川泉三が滋賀県蒲生郡中野村大字今堀(東近江市今堀町)の日吉神社から発見したものである。文書は整理分624点、未整理分323点、宮座八人衆保管文書5点の952点で、時代は鎌倉後期から昭和年代にわたる。内容は、今堀郷の属する荘園(しょうえん)得珍保の関係文書として、中世商業関係、農業関係、領主支配関係の文書、また郷村関係文書としては、村掟(むらおきて)、対他郷関係、神事関係、検地関係の文書に分類される。とくに中世商業関係文書は14世紀以降の商業座を知るうえで貴重で、村掟類も惣村(そうそん)生活の具体像を描くには必見の史料である。
[仲村 研]
『仲村研編『今堀日吉神社文書集成』(1981・雄山閣出版)』