日本大百科全書(ニッポニカ) 「介護うつ」の意味・わかりやすい解説
介護うつ
かいごうつ
高齢の家族を在宅で介護する人が、悩みや不安によるストレス、心身の疲労などから、うつ状態に陥ること。ひとりで介護を抱え込んでしまうまじめな性格の人ほど陥りやすいとされる。身近な人がもとの状態に戻らないという喪失感や、自分の時間が確保できない拘束感などに起因するケースがよくみられる。食欲がない、眠れない、といった初期症状が続くうちに、口数が減り、突然涙ぐむといった気分の変調が激しくなることが多い。また、ぼんやりしていることが多くなり、「つらい」とか「死にたい」などといった悲観的なことを頻繁に口にすることも典型的な症状である。初期であれば、一時的な気分転換をするだけで介護を抱え込んだ緊張状態を解くことができるため、訪問介護やデイサービスといった介護サービスを利用するなどして自分の時間をつくり、よく眠って疲れをためないように心がけることがたいせつである。
2005年(平成17)に厚生労働省が親族を在宅介護している人を対象に行った調査で、うつ病の傾向をみる国際的な指標である「自己評価抑うつ尺度」を用いて調べたところ、23%という高い割合で軽度から重度の抑うつ状態がみられた。
[編集部]