翻訳|fatigue
医学用語。一般に疲労は〈つかれ〉と同義に用いられるが,生理学,心理学,衛生学,社会学などの分野では,〈つかれ〉を表現する科学的用語として用いられ,また産業疲労,通勤疲労,スポーツ疲労,学習疲労などのように用いられることもある。疲労という言葉は日常体験から生まれた,主観的な言葉であるために,学問的に正確に定義することはむずかしい。一般的には繰り返し力を出したり運動したときに,その結果,作業能力や運動能力が減退したときと解される。一方,学者によって多くの定義がなされ,たとえば大島正光によれば,〈主として主観的な感じで,客観的に計測される種々の現象,仕事の内容の変化などをもとにした抽象化された一つの約束される概念で,直接計測の対象になるものではない〉とされ,また,斎藤良夫によれば〈持続能力の困難性,休息要求や仕事への嫌悪感や逃避として体験され,一過性のものでなく持続した体験であり,過労を前もって予見される形で体験されるもの〉とされる。この場合,過労とは小木和孝によれば〈日常生活のさまたげになる後影響の生じた疲労,すなわち何らかの健康障害を生じ,最終的には労働や学習能力の損失をきたした状態〉をさす。
疲労はその発現の仕方によって,急性疲労と慢性疲労に分けられる。急性疲労には,数分から数十分という短時間に発生する狭義の急性疲労と,数時間単位で発生する亜急性疲労があり,いずれも比較的短期間の休息で回復する。一方,慢性疲労は,1日の作業や活動がその日の自宅でのくつろぎや睡眠によって回復する日周性疲労と,休日をはさんで1週間の単位で回復する狭義の慢性疲労に分けられる。急性疲労の蓄積は慢性疲労への発展を促し,通常,蓄積疲労とも呼ばれる。
疲労はまたその生じる部位によって,肉体疲労と精神(神経)疲労などに区分される。前者は主として筋肉レベルでの疲労をいい,後者は大脳皮質や脳幹網様体での活動性低下や覚醒レベルの低下をいう。通常,肉体疲労は発生しやすいが回復も早いのに対し,精神(神経)疲労は発生しにくいかわりに回復は遅いと考えられている。視覚器官の過度の使用によって生ずる眼精疲労は,この両者の中間にある疲労である。
疲労を,人間をとりまく外環境と生体のホメオスタシスの維持,すなわち生体防衛の一般現象としてとらえる立場から,疲労の発生メカニズムについて,いくつかの説がある。筋肉疲労に関する乳酸疲労説やエネルギー消耗説と呼ばれているものがそれである。
(1)乳酸疲労説 乳酸の筋収縮抑制作用にもとづいたもので,筋肉に酸素を供給しないで繰り返し運動させると筋肉内に乳酸が増加し,それが一定量に達すると筋肉は硬直状態になり,運動しなくなるという説である。筋収縮にはATPのエネルギーが使用されるが,細胞内に蓄積されている量はごくわずかであり,収縮を続けるためには細胞内でATPが持続的に再合成されなければならない。ATPは,ブドウ糖がピルビン酸に分解される無酸素過程で2分子,その後クエン酸回路に入って炭酸ガスと水に分解していく有酸素過程では36分子が合成される。すなわち圧倒的に有酸素過程のほうが筋収縮にとっては有利だということになる。一方,酸素が供給されない場合,ブドウ糖の分解過程はピルビン酸の段階で停滞し,ピルビン酸は乳酸に変化してたまっていき,筋収縮を抑制する。実際の労働の場面では,この説は酸素の供給が十分でない静的な筋緊張を伴う作業,たとえば中腰姿勢を続けたり,一定の力でじっと物を支えなければならない作業,一部の小さな筋群のみで単純繰返しを行う作業などで,筋疲労が発生しやすいことの合理的な説明になる。
(2)エネルギー消耗説 エネルギーの枯渇によって疲労が発生するという説。筋肉の活動のエネルギー源として用いられる糖質は筋肉の活動によって,まず筋肉内にあるグリコーゲン,次いで血中にあるグルコース,そして肝臓中に貯蔵されているグリコーゲンと順次消費される。これらが不足してくると脂肪やタンパク質もエネルギー源として動員されるようになり,十分な補給が続かずエネルギー源が枯渇すると,さらにビタミン類,カリウム,カルシウムなどもしだいにその量を減少させる。これによって疲労が発生するという考え方である。激しい筋肉の活動を続けるときには,糖質だけでなくビタミンやミネラル類の補給も必要となるゆえんである。また激しい筋肉の活動が要求されるスポーツなどの場合,必要なエネルギー量に対して,相対的に酸素供給量が少ないことも疲労の発生に関連するため,エネルギー効率を上げるために十分なウォーミングアップをしてから活動を開始することの根拠にもなっている。
一方,精神疲労による生体の反応は,大脳皮質の生理的機能レベルを表していると考えられているフリッカー値(高頻度に点滅する光を被験者に見せ,その点滅間隔を徐々に大きくしていって,被験者が,光が点滅していると感じたときの値,サイクル/秒で表される)の低下状態や,単純な計算など同じ種類の知的行動を反復して行わせた際に現れる反応の著しい遅れをみるメンタルブロッキングテスト,作業ミスやエラー,副次行動の出現や頻発,姿勢の変化などの経時的観察などによって把握されている。
これらのメカニズムについては,まだまとまった定説はないが,I.パブロフの条件反射説にもとづく保護抑制の考え方や,H.W.マグーンの脳幹網様体賦活系の機構から説明されることが多い。前者は,大脳皮質を構成する神経細胞は長時間働くと,みずからの活動能力を低下させるという自己保護的な性質をもっているという理論にもとづくもので,精神疲労が判断の遅れや誤りとして発生してくること,また疲労のあとしばしば体験される睡眠要求が,神経細胞の抑制状態が大脳皮質全体に拡大した状態であることの説明になっている。一方,後者は,脳幹網様体の活動の強弱によって大脳皮質の活動水準が規定されるという上向性の機能と,逆に大脳皮質の活動性に応じて網様体の興奮レベルがコントロールされるという下向性の機能の,互いのフィードバック機構から説明しているものである。長時間の精神的活動によって休息や睡眠要求を生じたとしても,意志の制御によってある程度作業を続けることができるのは,下向性のメカニズムから説明することができる。
疲労は,生理学的側面,行動的側面,意識的・心理的側面など種々の側面から生体に現れる徴候によって観察されているが,自覚的疲労徴候によってその構造を知る試みも行われている。このうち急性疲労に関するものとして〈自覚疲労症状しらべ〉がある。これは,日常よく訴えられる疲労症状を3群各10項目にまとめ,作業の前後や途中経過にともなって記入を求め,それぞれの作業態様や作業種類による訴え率の違いから,疲労の構造がどのような特徴をもっているかを集団的に分析するものである。Ⅰ群は〈眠けとだるさの成分〉,Ⅱ群は〈注意・集中の困難の成分〉,Ⅲ群は〈身体局所の違和感の成分〉に属するものとされている。普通の生産現場での各群別の平均訴え項目数は,通常Ⅰ>Ⅲ>Ⅱの順序になるのに対して,精神・神経負担の大きい作業や夜勤作業ではⅠ>Ⅱ>Ⅲの順になり,もっぱら肉体作業の多い作業ではⅢ>Ⅰ>Ⅱの順になることもあるとされている。
一方,慢性疲労に関しては,81項目の蓄積的疲労症状から一般的疲労徴候,気力の低下徴候,焦燥感の徴候,身体の不調徴候,精神的不安徴候,労働意欲の低下徴候の6群の成分に区分されている。
現代人の疲労は,肉体的疲労を主としたものから精神(神経)疲労を主としたものに変化してきており,これは労働や生活行動の変化と対応している。その日のうちに回復する適度の疲労感は,日常の生活においてはむしろ好ましい現象であるが,慢性疲労や過労につながる疲労を避けるためのくふうが必要である。その対策として最も効果的な方法は,休息と睡眠の確保である。休息のうち,急性疲労を防ぐための休憩時間の確保の仕方は,それぞれの疲労の性質や程度によってくふうされるべきであるが,できるかぎり分割して小刻みにとっていくことが望ましく,自発性,非拘束性の休息で気分転換や適度の運動などの内容を含ませるべきである。またスポーツ活動や筋肉負担の大きい労働の場合には,そのエネルギー消費に応じたバランスのとれた栄養補給が必要である。
日周性疲労の対策としては睡眠が最も効果的であるが,睡眠時間は少なすぎることはもちろん,多すぎることにも問題があり,1日7~8時間が適当で,同時に深い眠りが得られるくふうも必要である。生体の概日リズムに合わせた夜間の休息や睡眠の確保はとくにたいせつである。
最近の勤労者の余暇の過ごし方としては,ごろ寝やテレビ観賞など身体をあまり動かさない消極的なものが多いが,慢性疲労を回復させるうえでは,レクリエーションやスポーツ活動など積極的な余暇活動が推奨される。慢性疲労は過労につながりやすく,腰痛,頸肩腕障害,自律神経失調症,消化性潰瘍などの発症,また高血圧や心臓疾患,胃腸障害など種々の内臓疾患の悪化やうつ反応,神経症などの誘因にもなることがある。こうした過労を基礎とする健康障害の発生をできるかぎり未然に予防していくためには,個人の健康に対する自覚とともに社会的理解と対策が必要である。
→休息
執筆者:上畑 鉄之丞
工学の用語で,疲れともいう。材料に引張りまたは曲げ変形の,破壊応力よりも低い応力を繰り返し負荷したとき,この材料に損傷が累積し,材料の強さが低下する現象。低応力下で使用していた材料が突然破壊(疲労破壊という)して大きな事故を引き起こす要因となるため,その予知と防止は構造材料の信頼性を確保するにあたって大きな課題である。疲労破壊の例としては,車軸などの破壊事故があげられるが,これらは105~106回の繰返し応力下で生じたものである。これに対して,近年,比較的大振幅の繰返し荷重を受け,103~104の繰返し数での,いわゆる低サイクル疲労による破壊が注目されてきている。これは,例えば,地上と上空との気圧の差を受ける航空機の機体の破壊事故などの原因となる。
疲労は,材質,負荷条件および化学的環境によって大きくその様相を異にし,とくに,環境下での疲労は腐食疲労と呼ばれる。この疲労の機構は,現在のところ完全に解明されるに至っていないが,疲労硬化,疲労軟化による微視組織の変化の段階を経て,亀裂発生に至ると考えられる。疲労により破断した材料を観察して見ると,疲労亀裂は,表面あるいは内部の介在物や粒界などの欠陥部から発生している。とくに,表面部には,繰返し荷重によって発生したすべり帯が形成されており,局所的に凹凸が観察される。このすべり帯は,表面から材料内部まで深く侵入しており,固執すべり帯persistent slip band(略称PSB)と呼ばれている。また,材料表面部のこれらの凹部,凸部は,おのおの入りこみintrusion,突出しextrusionと呼ばれ,これらの凹凸部に,他の部分よりも高い応力が集中して,疲労亀裂の発生位置となる場合が多い。
疲労により破断した面(破面)を走査型電子顕微鏡により観察すると,規則的な縞模様が見られるが,この縞模様はストライエーションstriationと呼ばれ,疲労亀裂進展に伴い形成されるもので,疲労による破面に特徴的に現れる。ストライエーションは,周期的な荷重によって,疲労亀裂の先端で,局部的な塑性ひずみが繰り返されることにより形成される。
疲労試験(疲れ試験ともいう)は,平滑な,すなわち切欠きのない試験片を用いて疲労限度を求めるものと,切欠きのある試験片を用いて亀裂進展挙動を計測するものとに分類できる。平滑な試験片を用いて,最大応力と最小応力との差(応力幅)をいろいろな値に変えて疲労試験を行ったとき,応力幅σaと,破壊に至る繰返し数Nとの関係をS-N曲線(ウェーラー曲線)と呼ぶ。その例を図に示すが,N=106~107で曲線が折れ曲がっている。つまり,このときの応力幅以下では,疲労が起きないことを示しており,その応力幅を疲労限度(疲れ限度),または耐久限度と呼ぶ。通常の疲労試験は,Nが107以上となる応力幅を疲労限度とするが,アルミニウム合金のような非鉄金属では107回を超えても破壊が起こり,疲労限度が存在しない場合もある。
一方,切欠きのある試験片では,疲労亀裂進展を破壊力学的に,すなわち,負荷された応力の範囲⊿σaのみならず,亀裂の長さ(2a)をも考慮して取り扱うことができる。このとき,亀裂進展速度と応力拡大係数範囲の間には,パリの関係式と呼ばれるべき乗則が存在する。また,疲労亀裂の長さは,亀裂が材料表面に現れている場合には直接観測できるが,内部を進む場合には,超音波探傷,アコースティック・エミッションなどの非破壊検査手法により計測する必要がある。
執筆者:岸 輝雄
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運動や作業を続けた結果としてそれらの能力が低下した状態を疲労という。日常われわれは「身体的疲労」「精神的疲労(心的疲労)」ということばをよく口にするが、それらをおこす要因はさまざまであり、現在までのところ、疲労の本態はまだ明らかにされていない。疲労がおこる原因の説明として、活動によって体内に疲労物質が蓄積するという説(疲労物質説)、外界から加わったストレスによってホルモン、とくに副腎(ふくじん)皮質ホルモンによる調節機序(メカニズム)が破綻(はたん)するとする説(ストレス学説)、あるいは、身体の各部分は通常相互に関連しあって合目的的な活動を行っているが、疲労はそのような各臓器・組織の有機的関連が乱れた状態であるとする説(機能失調説)など、多数の学説が提唱されている。しかし、これらの学説は、どれも疲労の一面を説明することはできても、われわれが日常経験する疲労の成因、その機序を全体として説明しうるものではない。
[真島英信]
疲労には、前に述べたように大きく分けて身体的疲労と精神的疲労とがある。身体的疲労は、肉体的運動の結果、主として筋(骨格筋)が疲労することによっておこるものである。実験的に体外に切り出したカエルなどの骨格筋を、1秒間に1回程度の頻度で電気刺激すると、筋の収縮高は初めの数回は増大するが、その後しだいに減少し、ついにはいくら刺激を強くしてもまったく収縮しないようになる。これが筋疲労とよばれるものである。筋疲労の原因は、エネルギー源の減少にもよるが、それよりもむしろ、筋の酸素不足の結果発生する乳酸によって筋肉内部の水素イオン濃度(pH)が低下し、代謝が全般に遅くなることによっている。また、神経線維と筋との連絡部、すなわち、神経筋接合部における刺激伝達がうまくいかなくなった結果として筋の収縮力が低下する場合もある(これを伝達疲労という)。身体的疲労は、全身的にはケトン体、ウロビリノーゲンなどの代謝産物の蓄積、アドレナリン分泌の低下による糖質利用の低下、毛細血管壁の酸素拡散速度の減少など、多数の要因が複雑に関係しあって生じると考えられている。
一方、精神的疲労は、単調な作業の繰り返しや、高度な知的作業を長時間続けたときに出現するが、身体的疲労とは異なり、はっきりとした生理的変化が現れないし、個人差も大きいため、その判定は困難である。また、精神的疲労時には大脳新皮質の活動性が低下するが、これには視床下部が重要な役割を果たしていると考えられている。さらに精神的疲労に関しては、心理的側面も見逃すことはできない。仕事に満足し、それに意欲を燃やしているときには疲労感は生じにくいが、仕事に失敗したとたんに疲労感に襲われることはしばしば経験することである。また、身体的疲労では、ときとして快感(心地よい疲れ)を伴うのに対し、視床下部はわれわれの感情を調節している大脳辺縁系とも密接に関連しているため、精神的疲労では、通常、不快感を伴い、怒りっぽくなったり、気分がめいったりするようになる。精神的疲労が慢性化すると、情緒の不安定、ノイローゼ症状をきたすこともある。
[真島英信]
疲労はまた、主観的疲労、他覚的疲労、生理的疲労に分類することもできる。主観的疲労は本人のみが感じる自覚症状であり、「疲れた」「体がだるい」「休みたい」といった独特の徴候が出現する。このような主観的疲労の程度、すなわち各症状の強さを客観的に測定・評価することは現在のところ不可能であるが、これは生命活動の行きすぎを防止するための一種の警報であると考えられる。一方、主観的疲労においては、心理的影響も無視できず、疲労感の甚だしい場合でも、自分が興味をもっている仕事が始まったり、緊急事態が発生すると、疲労感が消失してしまうことがある。
他覚的疲労は、作業量およびその質の低下として認めることができる。激しい運動を続けた場合には、筋の疲労によって運動能力は低下する。こうした疲労は、運動前後の筋力を測定することによって客観的に評価することができる。また、簡単な計算を長時間続けると、計算速度は時間とともに低下し、逆に誤りの割合はしだいに上昇する。これは精神的疲労によるものであり、計算速度や誤りの率によって疲労の程度を評価することができる。
生理的疲労は、筋疲労、神経伝達の疲労、その他身体諸機能の質的低下であり、種々の測定器具によってもっとも正確に評価することができる。疲労の判定に利用される情報としては、血液の比重、血沈、尿中への糖やタンパクの排泄(はいせつ)などの生化学的変化と、呼吸数、心拍数、血圧などの生理学的変化があげられる。しかし、これらは食事内容その他の影響を受けやすいという欠点をもっている。
疲労の測定にもっともよく用いられるのが、フリッカーflicker(ちらつき)検査である。刺激光を一定の頻度で規則正しく遮断して明滅させると、ちらつきの感じを生ずる。しかし、頻度が一定数以上になると、ちらつきは融合して持続的な光として感じられるようになる。このようになる最小頻度を「臨界融合頻度」または「フリッカー値」という。フリッカー値は、光の強さによっても大きく異なるが、条件を一定にした作業の前後で測定を行ってみると、作業後には作業前に比べてフリッカー値が低下する。すなわち、比較的低頻度の光の明滅でもちらつきを感じることができず、持続的な光として感じられるようになるわけである。これは、疲労によって大脳の活動水準が低下したためであると考えられ、疲労の程度を定量的に表す方法としては便利なものである。
ところで、前述した3種類の疲労は、それぞれが別個に存在するものではなく、通常は三者が同時に出現するものである。このなかで、もっとも感度の高いのが主観的疲労である。主観的疲労の場合は、本人に疲労感があっても、外部からはまったくその疲労を検知できないこともある。これは、疲労感が単なる心理的な問題(心の持ちよう)で決まるためではなく、われわれの用いる測定器具よりも、われわれの身体のほうが数段優れた疲労の検出器であるためと考えられる。
[真島英信]
疲労に対処するもっとも有効な手段は、休息と睡眠である。「疲れたら休む」ということは、当然だれもが知っており、かつ実行していることであるが、どの程度疲れたら、どのくらい休む必要があるかという判定は困難である。身体的疲労の場合は、筋力の低下、脈拍数の増加などによって本人も疲れの程度がわかり、休息の要・不要を判定することができる。しかし、精神的疲労に関しては個人差が大きく、かつ疲労の程度を判定するためのはっきりとした症状がない。とくに計器の監視作業のように、重要ではあるが単調かつ長時間にわたる作業では、精神的疲労が激しく、時間とともに誤りを犯す危険が上昇する。このような場合には、一定の時間を決めて休息することが望ましい。1日の仕事によってたまった疲労は、帰宅して休息し、睡眠をとることによって回復する。1日の疲れは翌日に持ち越さないことがもっとも望ましいが、仕事の内容によっては、その日のうちには疲労から回復せず、しだいに疲労が蓄積することがある。このような疲労の慢性化を防ぐうえでは、7日目ごと、すなわち日曜日に1日休息することは非常に合理的である。また、疲労からの回復のためには、ただ単に何もしないで休むよりも、身体の疲労した部分はできるだけ休ませつつ、逆に他の部分を活動させるほうが効果があるといわれている。実際に、たとえば作業によって右手が疲労した場合は、何もしないで休息するよりも、左手を働かせていたほうが右手の疲労の回復が速いという報告が出されている(セチェーノス効果)。同様の理由から、精神作業によって疲労した場合は休日には軽いスポーツを行い、肉体労働によって疲労した場合は休日をのんびりと読書や趣味で過ごすことが、疲労の回復には有効となる。
[真島英信]
字通「疲」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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繰返し応力(またはひずみ)を与えたとき,材料の構造や性質が変化すること.その結果,一定方向の応力の場合よりもはるかに小さい応力で破壊を生じる.これを疲労破壊とよび,疲労破壊までに要する繰返し回数または時間を疲労寿命という.疲労寿命は繰返し応力またはひずみの大きさによってかわり,無限回繰り返しても破壊することがない応力の最低値を疲労限度という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…工学の用語で,疲れともいう。材料に引張りまたは曲げ変形の,破壊応力よりも低い応力を繰り返し負荷したとき,この材料に損傷が累積し,材料の強さが低下する現象。低応力下で使用していた材料が突然破壊(疲労破壊という)して大きな事故を引き起こす要因となるため,その予知と防止は構造材料の信頼性を確保するにあたって大きな課題である。疲労破壊の例としては,車軸などの破壊事故があげられるが,これらは105~106回の繰返し応力下で生じたものである。…
…さらに作業を続けると感情的爆発や短絡行動,作業の放棄が生じ(過飽和),またそれと類似した作業に対しても嫌悪が生じる(共飽和)。飽きが心理的なものとされるのに対して,疲労は生理的なものとされる。したがって,飽いてはいても疲労していないことがあり,その場合には気持ちが変わったり作業に新味が加わったりすると作業を続行できることになる。…
…エネルギー代謝率の例をいくつかあげると,安静休息0,座位0.3,歩行3,かけ足7,自転車乗り4,入浴1などである(なお夜間睡眠は基礎代謝の80~90%)。 エネルギー代謝量と疲労との関係は,運動(または労働)の種類によって必ずしも一概にはいえない。エネルギー代謝率が4以上の運動の場合には,身体のほとんどすべての筋肉を用い,しかも動的な要素が多いので,この場合には疲労は主としてエネルギー消費量によって評価される。…
…一般にはビタミン剤,アミノ酸製剤,ミネラル製剤,滋養強壮剤のことをさすが,広義には一般輸液,高カロリー輸液,宇宙食や外科栄養法に用いられる成分栄養剤elemental dietも含まれる。いわゆる栄養ドリンク剤は,疲労回復のため,また健康保持,体力増強,さらに強健になることを望んで服用されており,日本人の薬好きを反映し,消費量も,清涼飲料水に分類されているものも加えると年間数十億本にのぼる。 日本の栄養ドリンク剤は,第2次大戦中の〈航空戦略増強液〉が始まりといわれている。…
※「疲労」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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