仏教図像学(読み)ぶっきょうずぞうがく(その他表記)Buddhist iconography

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仏教図像学」の意味・わかりやすい解説

仏教図像学
ぶっきょうずぞうがく
Buddhist iconography

仏教美術においてインドの古代初期には,釈尊は人間の形をもって表現されず,象徴 (宝座,聖樹など) によってその存在が示された。しかし仏教が西洋古典から導かれたヒューマニズムと結びついて仏像が成立して以来,仏教図像の大きな進展をみた。仏教はもともと神話世界をもち合せず,仏伝が次第に形成されたにすぎないが,大乗仏教菩薩思想の高まりとともに仏教の有神論的性格が強まり,多仏,多菩薩が出現するに及んで,仏教図像は多彩な展開をとげた。さらに密教においては図像に解脱のための必須の役割をさえ付与したため,仏,菩薩,天,明王などの仏像の図様を伝承,書写した。日本では平安時代後期からこのような図像の整理,研究,収集が盛んになり,多くの図像集 (→図像抄 ) が編纂された。近代的な仏教図像学は,個々の説話図,変相図,密教図像などを経典との照合において同定することから始り,大きな成果をあげている。しかしさらに図像の歴史的意味を解釈しようとする図像解釈学 (イコノロジー iconology) については,その多くを今後の課題として残している。

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