変相(読み)ヘンソウ

デジタル大辞泉 「変相」の意味・読み・例文・類語

へん‐そう〔‐サウ〕【変相】

姿・顔かたちが変わること。また、その変わったようす。
極楽地獄のありさま、また仏教説話などを絵解き風に描いた仏画浄土変相地獄変など。変相図
電流の相の数を変えること。

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精選版 日本国語大辞典 「変相」の意味・読み・例文・類語

へん‐そう ‥サウ【変相】

〘名〙
仏語。地獄・極楽またはその他の相状などを描いた絵図。変相図ともいう。
参天台五台山記(1072‐73)三「西北二面壁尽大師四十二変相」 〔瑞応伝〕
② (━する) いろいろに形相、姿かたちが変わること。また、その変わった姿かたちなど。
俳諧・葛の松原(1692)「俳諧は世の変相にして」
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝八八「お賤が又斯う云ふ変相になるといふのも」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変相」の意味・わかりやすい解説

変相
へんそう

経典に基づき,その経意や説話を主として絵画に造形化したもの。経変,または単に変とも呼ばれ,広義の仏教説話図にあたる。仏の本生図 (本生経変) あるいは仏伝図をはじめとし,別系の地獄変などを含む小乗系説話図と,大乗経典の内容に基づいた維摩 (ゆいま) 経変相,法華経変相華厳経変相などの説話図や,阿弥陀以下の浄土を図絵したいわゆる浄土変相などに大別される。中国で成立し,特に唐時代に盛んになったもので,寺院壁画にしばしば描かれ,敦煌には唐から宋初までの遺品が数多く残っている。この変相を絵解きするための変文という特殊な俗講文学もこの頃流行した。日本でも浄土変相をはじめ,法華経変相,華厳経変相など多数の変相図が作られたが,平安時代以降は変,変相の代りに密教的な曼荼羅の語が用いられるようになり,浄土曼荼羅,法華経曼荼羅などと呼ばれた。

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世界大百科事典(旧版)内の変相の言及

【浄土変相】より

…浄土の仏,聖衆や美しい荘厳(しようごん)の有様を描写した絵画や繡帳のこと。変相は大乗経典の内容を絵で表現したもので,それに対する絵解きの文章としての〈変文〉とは表裏の関係にあった。浄土変,浄土図と略称する。…

【説話画】より

…仏教説話は仏伝,本生,譬喩(ひゆ)説話に大別されるが,それらはインドにおいてストゥーパのレリーフや壁画などに造形され,西域,中国に流伝し,各種の浄土図にも及んだ。これら説話画は,漢訳経典においては〈変〉〈変相〉と称され〈変現〉の意味を有する(変相図)。唐代になると〈変〉は仏教説話に限らず,世俗的題材の説話美術にまで拡大された。…

【仏画】より

…平安時代に和風建築が浸透し,修法も貴族の邸宅において行われるようになると,修法の本尊として小規模な懸幅が多量に制作されるようになる。一方,《当麻曼荼羅》や〈仏涅槃図〉など集合尊の多い変相系の仏画の画面は横に広がり,鎌倉時代になると何幅かを一組にすることによって,説話内容を表現することが行われた。掛幅形式は,展示,保存,収納などに優れた機能性を有するため,信仰の対象として一般に普及した。…

【変相図】より

…本来,単に変,もしくは変相といい,広義の仏教説話を絵画,浮彫,彫塑などで造形化したもの。変とはもともと仏教用語で,サンスクリット語パリナーマpariṇāmaの訳語とされ,〈転変〉のことをいうが,ここではさらに派生した〈変現〉の意味に用いられ,仏教説話や経典の内容,そこに説かれた譬喩,奇跡譚などで視覚的な造形に表現したものを指すようになった。…

【変文】より

…さらに必ずしも特定の経典によらずに,釈迦の本生譚やその他の仏教説話を自在に潤色しながら語り,かつ唱うのもあり,さらには仏教とは関係なく中国の史伝や物語を主題とした講釈も増えてきた。 これら現存の写本には〈変文〉と題するもののほか単に〈変〉と題するものや,〈縁〉〈話〉〈詞文〉〈記〉〈讃〉など種々あるが,〈変〉とは〈維摩変〉や〈浄土変〉のように,仏典に説かれた話を絵にかいたもの(変相)をいい,敦煌の壁画にもその実物があるほか,変文の写本にも絵の付いたのや,〈幷(あわ)せて図一巻〉と題したものや,〈一鋪〉(画幅1枚の意)とか〈画本〉とか題したものがある。つまり語り手は絵の各場面を指し示しながら語り進めたのであった。…

※「変相」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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