改訂新版 世界大百科事典 「代用液」の意味・わかりやすい解説
代用液 (だいようえき)
Ersatzflüssigkeit[ドイツ]
血液あるいは細胞外液の代用として用いられる人工的な溶液。生理的塩類溶液ともいう。生体から切り出した臓器や組織でも,その動物に適合した代用液の中に入れたり,あるいは代用液で灌流すると,それら摘出標本の機能をかなりの時間維持することができる。ただし,その場合は十分な酸素を溶解させる必要がある。通常用いられる代用液は,その動物の間質液組成に類似した組成の液であるが,哺乳類ではほぼ共通した組成のものが用いられ,両生類にはやや低濃度のものが用いられる。代用液としての基本条件は,浸透圧,pH,電解質組成が適当であること,場合によりブドウ糖などの栄養物を含むことである。歴史的には,リンガーS.Ringer(1885)が摘出したカエルの心臓の活動を維持する能力を指標につくったのが初めで,その溶液をリンゲル液という。哺乳類用として代表的なものにロック液,タイロード液,クレブス=ヘンセレイト液などがあり,このうちクレブス=ヘンセレイト液が最もよく用いられる。なお生理食塩水は,代用液の一つで,体液と等張になるように調整した食塩水をいう。
執筆者:星 猛+日向 正義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報