改訂新版 世界大百科事典 「会符」の意味・わかりやすい解説
会符 (えふ)
江戸時代,幕府や大名,朝廷,公家,寺社などが荷物運送に際して,自分の荷物であることを明示するため荷物につけた証札で,伝符,行李符ともいう。絵符とも書く。会符は,多くは木札で,板札の上部に穴をあけて紐を通して荷物につるすもの(絵符)と,板札の下に柄をつけて荷物に立てて標示するもの(立絵符)との2種類があった。幕府や朝廷のものには葵や菊の紋章の下に〈御用〉と墨書し,大名の場合は各家の紋章の下に城下所在地名,寺社などは紋章の下に例えば〈知恩院 御用〉などと記した。これらの荷物は,宿駅の人馬を使って継ぎ送ったが,将軍家御用物など無賃銭のもの以外は,多くが御定賃銭で運送できる特権を与えられていた。18世紀後半以降,商品流通がさかんになり,御定賃銭と相対(あいたい)賃銭との差がひらくと,町人,百姓が武家,公家などに金銭を提供し,その会符を借りて自分の商品荷物を御定賃銭で送る風潮が生じた。このため幕府は,しばしば禁令を出して取り締まったが,十分な効果はなかった。
執筆者:丸山 雍成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報