改訂新版 世界大百科事典 「伝奇作書」の意味・わかりやすい解説
伝奇作書 (でんきさくしょ)
歌舞伎,浄瑠璃資料。西沢一鳳(いつぽう)著。写本7編21巻。初編は《元亨釈書(げんこうしやくしよ)》をもじり《言狂作書》ともいう。初編に1843年(天保14)の自序,追加編に1851年(嘉永4)の跋があるので,およそこの間に徐々に書きつがれて成立したものと思われる。内容は,歌舞伎,浄瑠璃の作者の伝記をはじめ,狂言の筋書,評釈,実説考証,さらに作劇方法や役者の逸話,古書の写しと雑多におよぶ。作者は演劇書書肆出身の狂言作者で,本書はその豊富な資料と実体験に支えられて成っている。とくに当代である天保・弘化(1830-48)ころの劇壇に関する記事は,信頼性に富む。《新群書類従》第1,第3に収録。なお,同じ著者に《脚色余録》3編9巻(《新群書類従》第2巻収録)がある。
執筆者:武井 協三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報