化学辞典 第2版 「低酸化状態錯体」の解説
低酸化状態錯体
テイサンカジョウタイサクタイ
low-oxidation-state complex
中心金属原子が低い酸化状態にある錯体を意味するが,一般に,通常の二価および三価の中心金属がつくる錯基の電荷より小さい錯体を,低酸化状態錯体という.たとえば,トリスビピリジンクロム錯体には,[Cr(bipy)3]3+,[Cr(bipy)3]2+,[Cr(bipy)3]+,[Cr(bipy)3]0 などが存在するが,後二者を低酸化状態の錯体という.低酸化状態錯体をつくる配位子として,一酸化炭素,イソニトリル,ホスフィン,アルシン,ビピリジン,フェナントロリン,フタロシアニン,ジチオケトン,不飽和有機分子などがある.これらは,中心金属原子から電子を受けとることのできる低い空のπ軌道をもち,σ型の配位結合によって中心金属原子上に集まる負電荷を配位子上に非局在化することで,中心金属原子の低い酸化状態を安定化する.低酸化状態錯体の多くは,希ガス構造(18電子則)をとり,反磁性である.とくに金属カルボニル錯体は,希ガス構造をとる傾向がいちじるしい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報