化学結合の一種で,結合にあずかる2個の原子の一方のみが結合を形成する電子対を提供する場合をいう。通常1本の化学結合は,これにあずかる2個の原子が1個ずつの電子を提供し,その電子対をもって形成されるが,配位結合では一方の原子が電子を対で提供し,これを両原子が共有する形で形成される。たとえば,トリメチルアミン(CH3)3Nと三フッ化ホウ素BF3が反応すると,前者の窒素原子上の非共有電子対(孤立電子対)が結合に提供される。
(CH3)3N:+BF3─→(CH3)3N→BF3
見方を変えると,Nの上の非共有電子対のうちまず1個がBF3に移って(CH3)3N⁺・とBF3⁻・というイオン・ラジカルが生じ,この間に共有結合とイオン結合が同時に形成されたと考えることもできる。一般に配位結合には共有結合とイオン結合の両方の性格が共存し,半極性結合ともいわれるが,このように考えれば理解しやすい。配位結合は単に線で表すことも多いが,上記の例のように短い矢印を用いるのは半極性であることを強調するためである。配位結合は錯塩などの配位化合物のみならず,多くの有機,無機化合物に認められる。また後半に述べた見方からすれば,分子間に形成される電荷移動結合も同類とみなせる。
→化学結合 →電荷移動錯体
執筆者:木下 實
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化学結合を表面的に、形式に従って分類したときの一形式。提供結合、半極性結合ともいう。一方の原子を中心として考え、その原子について方向性をもった結合のうち、結合に関与する電子が形式的に一方の原子からのみ提供されたと考えられる結合をいう。化学結合の本質からいえば、共有結合の一種で、共有結合的要素とイオン結合的要素をもっている結合である。すなわち、配位結合という特別の結合があるわけではないが、形式的にこのようによばれる。配位結合は錯体や多くの無機・有機化合物に認められる。
[中原勝儼]
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供与結合ともいう.ルイスの電子対結合において,結合に関与する電子対が,一方の原子からのみ提供されるとき,これを配位結合という([別用語参照]孤立電子対).
この結合は,錯体をはじめ,多くの化合物中に存在する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[化学結合の種類]
化学結合には電荷の偏りぐあい,強弱など種々あるが,多くの化学的な事実から帰納的に大別するとイオン結合,共有結合,金属結合が重要である。そのほかに配位結合,水素結合,電荷移動相互作用など,また電気双極子や分極に基づく相互作用もある。さらにやや特殊なものとして一電子結合がある。…
※「配位結合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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