化学式AsH3。ヒ化水素ともいう。融点-113.5℃,沸点-58.5℃のニンニク臭のある気体。比重3.484g/l(0℃,1気圧)。水に対する溶解度20ml/100ml。エチルアルコールにわずか溶ける。きわめて有毒で,その毒性は一酸化炭素の10~20倍ともいわれる。取扱いはすべて性能のよいドラフトで行わなければならない。金属ナトリウムと粉末ヒ素を液体アンモニア中で反応させて得られるヒ化ナトリウムNa3Asに臭化アンモニウムNH4Brを加えると発生する。それを液体窒素で冷却したトラップに捕集する。
Na3As+3NH4Br─→AsH3+3NH3+3NaBr
ヒ化亜鉛Zn3As2を希硫酸で分解するか,酸化ヒ素(Ⅲ)を塩酸に溶解後,亜鉛粒を加えても得られる。
ヒ化水素の水素をアルキル基,アリール基で置換したAs-C結合をもつ化合物は多いが,一例を表に示す。いずれも悪臭をもち,有毒である。ジメチル亜鉛と三塩化ヒ素を反応させればトリメチルアルシンが,クロロベンゼン,三塩化ヒ素,ナトリウムを用いるとトリフェニルアルシンが得られる。ハロゲン化ヒ素とグリニャール試薬の反応で合成する方法もある。トリアルキルアルシンやトリアリールアルシンは,ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アリールと反応して無色の結晶アルソニウム塩をつくる。
(R,R′はアルキル基,アリール基,Xはハロゲン)テトラフェニルアルソニウムイオン(C6H5)4As⁺は金属の錯陰イオンの沈殿剤として用いられている。有機置換アルシン類は,同様なホスフィンPR3とともに遷移金属に配位子としてはたらき,安定な錯体をつくる。これは,金属のd軌道に満たされた電子を,逆に受け入れることのできる空のπ軌道をもっているからである。
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ヒ素の水素化物。水素化ヒ素、ヒ化水素ともいう。またAsH3の水素をアルキル基、アリール基、ハロゲンなどで置換した化合物たとえばAs(C6H5)3、As(C2H5)3などの総称でもある。金属ヒ化物を酸で分解するとき、またヒ素を含む物質を亜鉛とともに希硫酸で処理するとき発生する。ニンニク臭のある無色の気体。水100グラムに0.0019グラム溶ける(0℃)。エタノールにわずかに溶ける。きわめて有毒。アルシンを熱すると分解してヒ素を生ずる。これを利用したヒ素の検出法がマーシュの試験法である。塩素を通ずると燃え、ヒ素と塩化水素を生ずる。塩素水と反応する場合は亜ヒ酸、ヒ酸となる。アルシンには還元作用があり、硝酸銀溶液から銀を沈殿する。
[守永健一・中原勝儼]
アルシン
化学式 AsH3
式量 77.95
融点 -116.3℃
沸点 -62.4℃
密度 3.484g/L(0℃,1気圧)
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