改訂新版 世界大百科事典 「住江」の意味・わかりやすい解説
住江(吉) (すみのえ)
歌枕。大阪市住吉区に墨江の地名が残る。《古事記》の仁徳天皇条に〈墨江(すみのえ)之津を定め……〉とある。摂津国住吉(すみよし)郡で,遣唐使もここを利用した。《万葉集》以降この地域一帯は〈住吉〉と表記されることが多くなり,現在も住吉大社がある。日吉(ひえ)神社が日吉(ひよし)神社と読まれるのと同様に,それが〈すみよし〉と読まれるようになった。平安時代にはおもに〈すみのえ〉は入江,〈すみよし〉は郡名,社名,浦,里などに用い,別語になった。名義は清江(すみのえ)の意。住吉大社から西へ海の方向に出た所に高灯籠と呼ばれる大きな石灯籠があったが現在は台座が残るのみ。これは鎌倉末期の灯台で,明治時代にはここまで海であった。墨江之津のなごりである。《古今集》巻十七に〈我見ても久しくなりぬ住の江の岸の姫松いく世経ぬらむ〉があるほか,詠歌は住之江,住吉とも非常に多い。歌枕としてはしばしば松と併せ詠む。松は住吉大社の神木であり,長寿の象徴でもある。わすれがい,わすれぐさも多く併せ詠まれる。
執筆者:奥村 恒哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報