精選版 日本国語大辞典 「灯台」の意味・読み・例文・類語
とう‐だい【灯台】
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翻訳|lighthouse
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航路標識の一つ。船に陸上の特定の位置を示すために設置する塔状の構造物で,頭部に強力な灯器を備えている。また,日本の古代,中世に室内で用いられた灯火具も灯台といった。
→ランプ
灯台の歴史は古く,前280年ころエジプトのアレクサンドリアの港口のファロス島に建設された灯台は特に有名で,古代世界の七不思議の一つに数えられた。これは高さ約60m(一説では110m)の石積塔で,塔の頂部の台で枯草や木に樹脂を混ぜたものを毎夜燃やしたという。
日本では7世紀半ばに壱岐,対馬,筑紫に防人(さきもり)を配し,煙や火によって外敵の侵入を知らせるための施設である烽(とぶひ)を設けたのが始まりといわれ,その位置が遣唐使船の目標に便利だったので,昼は煙をあげ夜は篝火(かがりび)を焚いて目印とした。中世には船舶航行はかなり盛んであり,たいまつなどを燃やして航行の目印とすることは各地で行われたと思われる。
近世になると,豊後の姫島や志摩の菅島に篝火が船の遭難防止のために設けられており,慶安年間(1648-52)には江戸湾に入る航行が頻繁な相州浦賀港にも灯台が設けられ,航行の目標とされている。そのほか,摂津住吉大社の高灯楼,安芸宮島厳島神社の灯明台など,神社の灯台が有名である。これらは,本来は周辺の漁民の神前の灯明用であったものが,海岸に建てられ航行用の標識として便利であったため,むしろ船舶用の灯台としての役割が定着したものである。特に住吉大社の高灯楼は高さが20m近くもあり,大坂沖合を航行する船舶に恰好(かつこう)の標識となっていた。なお,神社の高灯楼は夜間照明の少なかった時代には陸上交通の目印となっている場合も多く,これも灯台と呼ばれ,近代都市の街灯の先駆としての役割を果たしている。17世紀後半以降,東廻航路・西廻航路の開発により廻航量が増加し,その寄港地である全国各地の港が賑わうが,夜間航行のため港の出入口や要所に灯台としての常夜灯が設けられた。多くは石製の高灯楼の形をしたもので,越前三国や出羽酒田などに残っているものは廻船問屋や問屋商人たちの寄付によって作られたことがわかる。これらの灯台は油皿に灯心を入れて火をともすもので,火力は乏しく雨風にも弱かったが,夜間航行の船の標識としては十分有効なものであった。
西洋式の灯台は1869年(明治2)点灯された観音埼灯台が最初で,日本の近代灯台事業はここに始まったとされている。現在の灯台記念日は,観音埼灯台起工の日すなわち1868年(明治1)11月1日(旧暦9月17日)をもって,1949年に制定された。
→灯籠
執筆者:玉井 哲雄+沓名 景義
設置場所は灯台の目的によって異なる。遠距離の目標となる灯台は,外洋から初めて近づく陸岸近くの主要な島や岬などに設置され,構造が堅牢で,光度も強く光達距離も大きい。たとえば本州東岸の尻屋埼灯台,金華山灯台,本州南岸の野島埼灯台,四国南岸の足摺岬灯台などがこれにあたる。沿岸航海や出入港用の灯台は暗礁などの危険物のある付近や,陸上目標の少ない海岸および防波堤先端などに設置するが,前者に比べて規模は小さい。
灯台などの航路標識の灯火と付近の一般の灯火との識別を容易にするとともに,隣接の航路標識との誤認を避けるために灯台によって特定の灯光の発射状態が定められている。これを灯質という。灯質には灯色を変えないものと,灯色を変えるものとがあり,前者には不動光,せん(閃)光,明暗光,後者には互光(灯色の混合),せん互光,明暗互光があり,かつそれらの灯色を変え,またいろいろ組み合わせて灯質をつくっている。灯色には白色,紅色,緑色,黄色およびオレンジ色などを使っている。灯台の等級は光度の強さで表さずに,レンズの大きさ,すなわちレンズの焦点距離およびレンズの高さ(大きさ)で表し,1等級~6等級および等外の7等級に区分している。
光の届く距離を光達距離といい,これには地理的光達距離と光学的光達距離の2種類がある。地球面は湾曲しているので,いかに光力が強くても灯高と観測者の眼高によって光達距離は制限される。これを地理的光達距離という。光学的光達距離は気象条件によって変化するので,たとえば晴天の暗夜におけるものを名目的光達距離としている。日本の灯台は一般に光力が強いので,おおむね地理的光達距離による光達距離が海図に記載されている。
なお,航空機の安全航行のため山頂などに設置するものに航空灯台があるが,海上から見えるものについては船の航海目標として利用できるものもある。
→航路標識
執筆者:沓名 景義
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…油用灯火具の一類。灯台(ともしだい)が油皿を台上におくのみで裸火をともすのに対して,行灯は油皿の周囲に立方形や円筒など形の框(わく)を作り,これに紙をはり,風のために灯火が吹き消されたりゆれ動くのを防ぐように,火袋(ひぶくろ)を装置した灯火具の総称である。〈行灯〉の文字は地方によっては〈あんど〉とも〈あんどう〉とも読まれている。…
…失明者に希望の〈ともしび〉をという願いのもとに世界各地に作られている盲人のための福祉施設。ライトハウス,すなわち〈灯台〉という意味の盲人福祉センター第1号が,1906年,創立者マザーWilfred Holt Matherの手によってニューヨークに設立され,以来アメリカ各地にライトハウスが作られるようになった。マザー夫人は,29年に来日してライトハウス建設を呼びかけた。イギリス留学中にマザー夫人の著書に接した岩橋武夫は,日本にもライトハウス作り運動を起こす必要性を痛感し,36年マザー夫人を招いて啓発運動を行い,大阪に世界で13番目のライトハウスを創設した(1952年,日本ライトハウスとなった)。…
…灯光,形象,彩色,音響,電波などを利用しており,種類としては夜標,昼標,霧信号所,電波標識などがある。灯台も航路標識の一種で,夜標の代表的なものである。国際的な関連が強く,国際航路標識協会(IALA)および国際水路機関(IHO)において国際的に極力内容を統一するよう協議しており,日本では航路標識法に基づき海上保安庁が管理している。…
※「灯台」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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