佐保殿(読み)さほでん

日本歴史地名大系 「佐保殿」の解説

佐保殿
さほでん

「今昔物語集」の淡海公継四家第二に「二郎ノ大臣(藤原房前)ノ北家微妙栄給テ、山階寺ノ西ニ佐保殿ト云フ所ハ此ノ大臣ノ御家也」とみえる。これによると、佐保殿は藤原房前の邸宅であったといえよう。もっとも、その前は春日斎女の宿舎であったようで、これを拡充し邸宅にしたといわれている。

次に造興福寺記(興福寺叢書)の永承三年(一〇四八)三月一日条に「左大臣(関白藤原頼通)率公卿等参入、西門荘厳事、(中略)衝黒還著佐保殿」とみえる。永承元年には興福寺が焼亡し、同三年には再建された。これは藤原頼通が落成供養のため南都に赴き、同寺での供養の諸行事が終わり、夜暗黒をついて佐保殿に帰着したことをうかがわせる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の佐保殿の言及

【摂関家渡領】より

…渡領とは,特定の地位に付随して渡り伝えられる所領をいい,平安中期には天皇に代々伝えられる後院渡領が成立しており,そのほか太政官の官務渡領や局務渡領などもあるが,史上とくに有名なものは藤原摂関家の渡領である。藤原氏長者の渡領については,1017年(寛仁1)道長が頼通に氏長者を譲ったときの寛仁の渡文が存したことを示す記録があり,当時すでに大和国佐保殿,備前国鹿田荘,越前国方上荘,河内国楠葉牧の4ヵ所から成る渡領が成立していたことがわかる。その後この渡文は,〈荘々送文〉とか〈荘園渡文〉とよばれ,氏長者の交替ごとに,朱器台盤などとともに新長者に渡された。…

※「佐保殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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