平安時代中・後期の詩文,書札を収録したもの。算博士三善為康の編。自序によれば永久4年(1116)に編したとあり,一応の編集が終わったと考えられるが,その後の増補があり,長承1年(1132)のものを含むので,最終的には保延年間(1135-41)の成立と考えられる。もと30巻あったが,現存は21巻分であり,文筆,朝儀,神祇官,太政官,摂籙家,公卿家,別奏,請奏,功労,廷尉,内記,紀伝,陰陽道,暦道,天文道,医道,仏事,大宰府,異国,雑文,凶事,諸国雑事,諸国公文,諸国功過の諸部がある。詩文は賦,詩,啓,伝,引,告文,記などの作品をのせ,詩文集としての性格ももっている。一方,書札は詔,宣旨,官符,申文などをはじめとするさまざまな公私の文書をのせ,当時の官人の実務に供する模範文例集としての性格ももっている。また内容から当時の政治・社会の状況を知る史料としても貴重である。《新訂増補国史大系》所収。
執筆者:勝浦 令子
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平安後期の類書。30巻(現存21巻)。三善為康(みよしためやす)編。1116年(永久4)成立。為康が『本朝文粋(ほんちょうもんずい)』以下の詩文集や律令格式(りつりょうきゃくしき)の類、儀式書などを抜粋し、府庫に所蔵される文書を尋ね出し、抄出して部類編纂(へんさん)したものである。その目的は、政務の参考となる文範集をつくり、なるべく時代に即応した材料を集めて後進の参考に資する点にあった。序文に「永久(えいきゅう)四年」に完成とあるが、その後の文章も多く含まれるので、彼の最晩年(1133ころ)にようやく擱筆(かくひつ)したと思われる。現存本に重複、追補、錯簡(さくかん)がみられ、未定稿であったか。4世紀にわたる詩文文書を収めるが、後三条(ごさんじょう)天皇から白河(しらかわ)院政期に集中しており、当時の制度を知るうえに貴重であり、全体的に編者の視野の広さと学問の深さがうかがえる。『新訂増補国史大系』29上所収。
[大曽根章介]
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