改訂新版 世界大百科事典 「佚事小説」の意味・わかりやすい解説
佚事小説 (いつじしょうせつ)
yì shì xiǎo shuō
中国,有名人の逸話や史書に記載されないような細かな事跡を記録したもの,またはその集。この代表的作品として南朝宋の臨川王劉義慶の撰に成る《世説新語》を挙げることができる。それには後漢から東晋に及ぶまでの有名人の逸話を徳行・言語・政治・文学・雅量・豪爽・傷逝・賢媛・任誕・倹嗇・汰侈・惑溺など36門に分類して収載している。《世説新語》が人物を中心とする逸話集であるのに対して,事柄を中心とするものに唐の李肇(りちよう)の《国史補》がある。その自序にいうように〈事実を紀し物理を探り疑惑を弁じ勧戒を示し風俗を採り談笑を助くるは則ち之を書す〉という態度で記録されたもの。〈志怪小説〉〈伝奇小説〉とは異なり,事件の断片・考証・教訓・民俗などをありのままに記そうとするもので,唐の趙璘(ちようりん)の《因話録》,五代の王定保の《唐摭言(とうせきげん)》,宋の欧陽修の《帰田録》などがある。
執筆者:内山 知也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報