改訂新版 世界大百科事典 「志怪小説」の意味・わかりやすい解説
志怪小説 (しかいしょうせつ)
Zhì guài xiǎo shuō
中国,魏晋南北朝時代の,超自然の現象や幽霊・化物にまつわる短いエピソードを集めた一群の記録集。志怪とは〈怪を志(しる)す〉の意で,《荘子》に出ることば。現在では〈小説〉と呼ばれるが,当時の人々はむしろ歴史書の一部と考えていた。このジャンルの代表作品である《捜神記(そうしんき)》の筆者干宝(かんぽう)が歴史家であったこともそれと関連する。すなわち当時の人々は,こうした記録を通して,怪異の現象に真剣に相対し,その意味を探求しようとしていたのである。《捜神後記》《異苑》などのほか,主要な作品は魯迅《古小説鈎沈》に収められている。この志怪小説によって文字に定着された多くのモティーフが,虚構を加味されて,唐の伝奇小説(伝奇),さらに後代の小説や戯曲に引き継がれてゆく。
執筆者:小南 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報