改訂新版 世界大百科事典 「使職」の意味・わかりやすい解説
使職 (ししょく)
shì zhí
中国,唐・宋時代を中心に重要な役割をになった官職の総称。皇帝の特使として臨時に派遣される者の肩書に〈某々使者〉とつけることは漢代に始まる。7世紀,唐の玄宗時代になると,節度使,租庸使,塩鉄使など軍事・財政の特別任務を帯びた使職がつぎつぎと置かれた。さらに中央政府の形骸化と反比例して,皇帝が直属の宦官に使名を与えて各種の任務につかせることが一般化する。これら使職は三省六部体系のいわば令外(りようげ)の官として,唐中期から五代にかけて活躍した。宋に入るとその整備が進められ,三司使,転運使をはじめとしたとくに財政関係の使職は,君主独裁制を支える重要な一員としてその体制の中に組みこまれ,さまざまに名称は変えても明・清まで続いてゆく。他方,軍人や宦官が任命されていた数多くの使職はしだいにその実権や職務が剝奪されて有名無実化する。北宋時代は多くが武臣の位階として残存したが,12世紀初めまでに消滅してしまう。
執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報