日本大百科全書(ニッポニカ) 「侍所沙汰篇」の意味・わかりやすい解説
侍所沙汰篇
さむらいどころさたへん
16世紀前半に成立したと推定される、室町幕府侍所関係の法制資料。15世紀半ばごろの室町幕府における政務処理、とりわけ諸人の訴に対する判断(沙汰)の手続の概要を記した『武政軌範(ぶせいきはん)』から、侍所における沙汰について解説した「侍所沙汰篇」を抜き出し、これに鎌倉・室町両幕府の「追加」(単行法令類)のうちから侍所・検断(けんだん)関係のもの、鎌倉68箇条、室町21箇条、都合89箇条(重出等を除けばそれぞれ66、17、計83箇条。傍例を含む)を加えて一書としたもの。書名は首部のタイトルに由来する。編者は未詳だが、室町幕府侍所に関係した奉行人によって、執務上の参考に資するために編まれたものであろう。室町幕府政所(まんどころ)執事代を務めた蜷川(にながわ)氏に伝えられた写本を底本として、『群書類従』武家部に収録されている。
[新田一郎]
『上横手雅敬著「侍所沙汰篇」(『群書解題 第3』1986・続群書類従完成会)』