日本大百科全書(ニッポニカ) 「偽竜」の意味・わかりやすい解説
偽竜
ぎりゅう
nothosaur
[学] Nothosauria
中生代三畳紀の、約2億2800万年~1億9960万年前にヨーロッパはじめ各地に栄えた海生爬虫(はちゅう)類の一つ。全長3メートル以下と小さい種類が多く、長い頸(くび)と尾をもち、四肢は水中生活のため適度に変形され、指に水かきがあったが、陸上を歩くこともできた。偽竜は分類学上は首長竜亜目とともに鰭竜(きりゅう)目を構成するが、首長竜の祖先ではなく、むしろその祖先から枝分かれしたものらしい。肩や腰の腹側の骨は構造が頑丈で、水中を漕(こ)ぐように泳ぐことができたらしい。頭骨がわりと小さく、平らで、長いあごには多数の鋭い歯が備わっており、魚を食べたらしい。
1939年(昭和14)に宮城県本吉(もとよし)郡柳津(やないづ)町(現、登米(とめ)市)より発見されたイナイリュウ(和名、稲井竜)は、頭骨が不明であったが、体の大部分は保存されており、偽竜の仲間メタノトサウルス・ニッポニクスMetanothosaurus nipponicusとして記載された。全長約1.3メートルと推定されている。
[小畠郁生]
『金子隆一・中野美鹿・長尾衣里子著『翼竜の謎――翼竜・首長竜・魚竜の時代』(1995・二見書房)』