元名村(読み)もとなむら

日本歴史地名大系 「元名村」の解説

元名村
もとなむら

[現在地名]鋸南町元名

(浦賀水道)に面する安房国諸村のうち最北端に位置する。房総往還が通り、北の上総国天羽あまは金谷かなや(現富津市)に向かう途中には明鐘みようがね岬がある。同所は難所として知られ、また国境に位置して軍事上の要地であった(里見軍記)。国境にのこぎり山があり、南中腹に広大な境内を有する日本にほん寺がある。本名村とも記した。

〔中世〕

文永八年(一二七一)と推定される二階堂行氏所領配分状断簡(二階堂文書)に本名村とみえ、金寿御前に譲られている。入海(東京湾・浦賀水道)の水上交通の拠点として早くに開発されていた所と考えられる。文明一八年(一四八六)九月初旬頃、京都聖護しようご院門跡道興は勝山かつやまを経て、「河名」で里人が菜を洗っているのをみて、「つみためて洗ひ河なの里人よたかあつものの供へにやなす」と詠んでいる。また「此所より右の方にのこぎり山といへる山あり」と鋸山を右手にみ、「河名」で舟に乗って海を渡り、三崎みさき(現神奈川県三浦市)に上陸している(廻国雑記)。この「河名」は、その地理的条件からみて元名をさすものと考えられる。この地を名字の地とすると思われる本名肥後守・本名綱秀・本名弘秀などの国人がいた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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