児童美術(読み)じどうびじゅつ(英語表記)children's art

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「児童美術」の意味・わかりやすい解説

児童美術
じどうびじゅつ
children's art

1887年にイタリア美術史家 C.リッチが『児童芸術』L'arte dei bambiniを著わし,子供の絵と大人の絵を区別したのが「児童美術」の語の最初である。その後,ドイツの A.リヒトワルク,イギリスの J.サリーなどによって児童の美術の特質が徐々に明らかにされ,ウィーンの F.チゼックによって児童の描く絵は,その精神の発達と並行して変化することが発見され,児童の創造意欲を重視した美術教育法が確立された。心理学の発達とともに,児童美術は幼児期の心理,精神の重要な指標とされ,現在では精神治療の技術としても応用されている。

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世界大百科事典(旧版)内の児童美術の言及

【美術教育】より

… 画家や彫刻家などの専門家を養成する教育は古くから存在していたが,普通教育において美術の教育的価値を認めるようになるのは19世紀の終りころから20世紀にかけてである。ちょうど,イギリスのサリーJames Sully(1842‐1923)が児童画の研究を行ってその表現の重要性が認識され,オーストリアのチゼックFranz Cizek(1865‐1946)が子どもの自己表現と創造性を認めて児童美術の学校を開いたころである。それまでの画学や図学の系統をひく〈目と手の訓練〉をめざす幾何画的・臨画(模写)的図画に対して,子どもにはおとなと違った独自の表現と認識があるという子どもの美術の価値が注目されて,それが普通教育に取り入れられるようになった。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」