入墨刑(読み)いれずみけい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「入墨刑」の意味・わかりやすい解説

入墨刑
いれずみけい

肉刑の一種。主として江戸時代に行われた肉刑の一種をさす。罪人に入墨を施すことは,江戸初期より幕府,ならびに各藩において,適宜に実施されていた。しかし,その法制化は,やや遅れて享保5 (1720) 年のことであった。幕府の入墨刑源流古代の墨刑 (げいけい) にあるといわれているが,その直接の母法は,明律の刺字 (しじ) 制である。そして,享保年間にいたって,それがはなきり,みみきりなどの厳刑に代えられたものと考えられる。『公事方御定書』によれば,入墨刑は,軽度の盗犯に科されることになっている。それは,詐偽横領などを働いた無宿者に多く科されている。入墨の形式は,奉行所によって各様であるが,江戸,大坂においては,囚の腕へ2本ないし3本の線を入れることになっていた。入墨を勝手に消すことは勿論違法であり,「御定書」には,かかる者に新たに入墨を施し,刑を科する旨の条文がみえている。この時代の入墨師は一般に,腕に入墨を施す注文を断ったというが,それは上のような犯罪に利用されないためであるという。これが廃止をみたのは明治期になってからで,明治3 (1870) 年9月刑部省はその方針を明らかにしたが,藩によっては新律綱領を実施するまで行なっていたところもある。

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