化学辞典 第2版 「凝固点降下法」の解説
凝固点降下法
ギョウコテンコウカホウ
cryoscopy, cryoscopic method, freezing point method
氷点降下法ともいう.希薄溶液の凝固点降下を利用して,溶質の分子量を測定する方法.溶媒の質量を w1,溶質の質量を w2,溶質の添加による凝固点降下度をΔ Tf,モル凝固点降下定数を Kf とすれば,溶質の分子量Mは,
で与えられる.Kf の値は溶媒の種類だけによって決まり,水1.86,ベンゼン5.10,ショウノウ40.0である.この実験にもっともよく用いられるのはE.O. Beckmann(ベックマン)の方法で,太目の試料管中に純溶媒を20 mL 程度入れ,このなかにベックマン温度計を挿入し,さらにこの試料管の下部を外とう管に挿入したものを冷却液中に浸し,溶媒と冷却液の両方を絶えずかきまぜながら温度計の読みを連続的にとる.凝固がはじまると温度は一定となるので,その温度を記録する.次に,溶媒中に既知量の溶質を投入,溶解させたのち,前とほぼ同様な方法で凝固点を測定し,両者の差からΔ Tfを知る.微量の試料の場合はK. Rastのミクロ法を用いる.これには Kf がいちじるしく大きいショウノウ(融点177 ℃)などを溶媒として用い,数 mg の試料を約10倍量の溶融ショウノウ中に溶かし,この場合は一般の融点測定と同様な方法で,普通の温度計を用いて凝固点降下を測定する.希薄溶液の条件からはずれるので精度はよくないが,微量の試料で近似的な分子量が得られる利点がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報