改訂新版 世界大百科事典 「切見世」の意味・わかりやすい解説
切見世 (きりみせ)
近世後期の江戸吉原における最下級の女郎屋。各所の岡場所にもあったもので,間口4.5~6尺,奥行2.5~3間の店が5~8軒,長屋形式で続いていたため,局見世(つぼねみせ)(局店),長屋ともいった。1軒1妓を原則とし,抱主は数軒を管理営業した。切(きり)とは時間売りの意で,一切(ひときり)100文が相場であった。この揚代は上級妓のそれの10分の1というものであったが,一切の時間の短いこともあって,その数倍を支払わさせることが多かったようである。抱女の年季が短く,歩合制をとるものや自前稼(じまえかせぎ)のものもいるなど,他の女郎と異なっていた。店の構造や抱女の形態は,明治以後の玉ノ井に共通する点が多い。なお,近世初期の局見世は,後期の切見世にくらべるとやや格の高いものであった。
執筆者:原島 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報