利根郡(読み)とねぐん

日本歴史地名大系 「利根郡」の解説

利根郡
とねぐん

面積:一六二九・八九平方キロ
昭和しようわ村・白沢しらさわ村・利根とね村・川場かわば村・片品かたしな村・水上みなかみ町・月夜野つきよの町・新治にいはる

県の北端に位置する。かつての利根郡のうち沼田盆地を中心とする地域が沼田市となり、勢多せた郡の一部が昭和村・利根村、吾妻あがつま郡の一部が新治村に編入されたため、現在の利根郡は北は新潟県・福島県、東は栃木県、南は勢多郡あずま村・黒保根くろほね村・富士見ふじみ村・赤城あかぎ村、沼田市、西は吾妻郡高山たかやま村・中之条なかのじよう町に接する。北から東にかけて谷川連峰や日光白根につこうしらね山、さらに足尾あしお山塊などの山々が重畳と連なり、その内側に武尊ほたか山、南には赤城山が聳立して県下でも有数の山岳地帯である。その間を新潟県境近くに源を発した利根川が南流して、赤谷あかや薄根うすね・片品などの支流の水を合せ、郡のほぼ中央に沼田盆地がわずかに広がりをみせる。赤谷川が流れ三国街道が通る郡西部を西入にしいり、片品川が流れ会津街道が通る東部を東入とよんだ。冬季には国境地帯は日本海型の豪雪に覆われることが多く、沼田付近でも積雪・寒気が厳しい。こうした自然条件は利根郡の歴史に大きな影響を与えた。

郡名は九世紀初頭の文献に登場するのが早い例だが、利根川は「万葉集」巻一四に「刀禰河」とみえていて古い地名である。訓は「和名抄」国郡部(東急本)に「止祢」とあり、異訓はない。

〔原始〕

従来群馬県の先土器時代の研究は、赤城山南麓を中心に展開してきたが、昭和五〇年代からの関越自動車道・上越新幹線・月夜野バイパス等の建設に伴い、多くの遺跡が発掘調査された。そのなかでも三峰みつみね山西麓、利根川左岸の丘陵上にある月夜野町後田うしろだ遺跡がまず注目される。安山岩を主体とする約四千五〇〇点の石器が、約二〇ヵ所のユニットとして出土している。豊富な石器群とユニットの展開など問題とするべき点が多く、今後県内の先土器時代研究の指針を決定づける重要な内容を含んでいる。赤城山西麓では片品川左岸段丘上に位置する昭和村糸井の中棚いといのなかだな遺跡があげられるが、同遺跡は先土器時代、縄文早期・前期・中期、弥生後期、古墳前期、平安時代の各時期にわたる遺跡で、段丘二段下にある糸井宮前いといみやまえ遺跡とともに縄文時代―平安時代の同一地点における推移を知るうえで重要な遺跡である。前者からは縄文前期の竪穴住居跡三〇軒・土壙約一五〇基、弥生終末から古墳初期の五軒、平安時代中期の一五軒の住居跡が検出され、後者からは縄文前期の住居跡八〇軒以上が検出されており、同期の集落としてはきわめて大規模なものである。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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