日本大百科全書(ニッポニカ) 「利益代表部」の意味・わかりやすい解説
利益代表部
りえきだいひょうぶ
interest representative office
外交関係のない国家同士が、大使館のかわりにそれぞれの国に設置する外交の窓口。査証(ビザ)発給、居留民保護、民間交流、人道問題などについての対話の窓口として設置される。利益代表部の外交官は中立国である第三国(利益代表国)の保護のもとに置かれ、形式上、利益代表部は第三国大使館の一部として運営される。利益代表部の外交官は本来の対話の窓口としての業務だけでなく、情報収集、反体制活動家の支援、自国が採用する政治・経済体制の宣伝などを行うこともあるとされる。しかし利益代表部の外交官は国内移動の制限などを受けることが多く、両国の外交関係が険悪になった場合、利益代表部が電力や水の供給制限などの嫌がらせを受けることもある。外交関係のない国家間では、そもそも利益代表部が設置されないケースも少なくない。このため外交関係改善の第一歩として、利益代表部を相互に設置し、外交官の相互派遣がとられることが多い。正式な外交関係が樹立されれば、利益代表部は大使館へ昇格する。
歴史的には、日露戦争中、日本はアメリカを第三国としてロシアに、ロシアはフランスを第三国として日本に、それぞれ利益代表部を設けていた。第二次世界大戦中には、日本はスペイン、スウェーデン、スイス、ポルトガルを第三国として、アメリカやイギリスなどに利益代表部を設置していた。またベトナムとカンボジアが国交断絶中、ベトナムは日本を第三国としてカンボジアに利益代表部を設けていた。アメリカとキューバは1961年より両国と外交関係があるスイスを第三国として、ワシントンとハバナにそれぞれ利益代表部を設置していたが、2015年の国交回復により双方の利益代表部を大使館に格上げした。
[編集部 2015年10月20日]