日本大百科全書(ニッポニカ) 「前進翼」の意味・わかりやすい解説
前進翼
ぜんしんよく
sweepforward wing
前進角のついた翼。航空機の揚力を発生させる主翼の左右の端が、翼の付け根より前側にある翼のことで、高速飛行において衝撃波の影響を小さくして空気抵抗の増大を防ぐという、後退翼と同じ特性をもつ。また、機体全体のサイズを小さくできるので航空母艦の格納庫など、狭いスペースにより多くの機数が収容できる特徴がある。
構造的には後退翼とは逆に、翼根失速をおこすとか、空力(くうりき)的な力が加わった場合ねじり上げとなって破壊しやすい、などの欠点があり、従来の軽合金を主体とした構造では実現がきわめてむずかしかった。しかし、最近では複合材料を利用して構造上の欠点を補うことができる見通しがつくようになり、将来は広く使われるものと期待されている。
[落合一夫]