2種以上の材料を組み合わせ成形することにより単独素材ではもちえない性質を発揮しうるようにした材料。この材料ははるかに古い時代から用いられてきた。たとえば『旧約聖書』には日干しれんがの割れを防ぐために粘土に藁(わら)を混入させる話が出てくる。日本の奈良時代の乾漆仏などもその例である。広義では、自然界にある材料、たとえば竹、木材、あるいは生体材料などのほとんどが複合材料である。複合材料には構造用と非構造用とがある。構造用はおもに強度などの性質を問題にし、非構造用は電気的・磁気的・光学的性質を問題にする。複合材料は普通、ある材料を特殊な微小形にして他の材料内に分布させた形をとり、前者を分散相、後者をマトリックス相とよぶ。分散相の形により分類すると、粒子分散形複合材料と繊維形複合材料とになる。
構造用繊維形複合材料のなかでもっとも多量に生産され、広い範囲に用いられているのはガラス繊維強化プラスチックスである。ガラスのような材料を繊維の形にすると強度が向上する。このような繊維をマトリックス中に分散させた複合材料の機械的性質は、普通は複合則といわれるもので表現される。粒子分散形複合材料を実用例で示すと、非金属粒子―非金属マトリックスの組合せでは砂や砂利がセメントと水の混合物によって結合されているコンクリート、金属粒子―非金属マトリックスの組合せではアルミニウム粉末をポリウレタン中に分散させたロケットの推進剤、金属粒子―金属マトリックスでは分散相にタングステンなどの硬い粒子を用いた耐熱材、非金属粒子―金属マトリックスでは分散相としてセラミックを用いたいわゆるサーメットなどがある。
導電体、不導体、半導体など物性の異なる材料を特定の寸法で配列させると、単味ではもたない特性を発揮することがある。たとえばNb3Snのように比較的高温(18.1K)で超伝導を示す材料を銅などの導電体中に微細に分散させると、臨界温度Tcをさらに上昇させられる。最近、通信用ケーブルとして使用され始めた光ファイバーも、光の屈折率の大きく異なるガラスの組合せであり、非構造用の分野でも複合材料の可能性は大きい。
[志村宗昭]
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2種以上の異なる素材を組み合わせて,おのおのの素材の長所を生かし,短所を補うことによって,いくつかの工学的要求を満足させる機能をもった材料。これには金属と金属,無機物質と無機物質,有機物質と有機物質,金属と無機物質,金属と有機物質,無機物質と有機物質など数多くの組合せがあり,実用されているものも少なくなく,材料科学の伸展に伴って,今後の発展が大いに期待される材料分野である。
→複合金属材料 →プラスチック系複合材料
執筆者:日向 実保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
性質,形状などの異なる2種類以上の材料を組み合わせた不均一な相をもつ材料.材料の適切な組合せにより単一材料では得られないすぐれた特性をもったものが得られる.ガラス繊維強化プラスチックはよく知られた例である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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