改訂新版 世界大百科事典 「加湿器肺」の意味・わかりやすい解説
加湿器肺 (かしつきはい)
humidifier lung
真菌類によって汚染された空調施設や加湿器内の水が空気中にばらまかれ,それらを吸入することにより発症する過敏性肺臓炎。原因菌には,真菌のほかに細菌や原虫類も考えられている。空調肺air conditioner lungともいう。1970年アメリカのバナザックE.F.Banaszackらにより初めて報告され,日常環境下でおこる新しい型の非職業性過敏性肺臓炎として注目された。日本でも最近,家庭用加湿器,セントラルヒーティングの普及とともに本症の重要性が強調されつつある。症状は他の過敏性肺臓炎と同様,悪寒,発熱,から咳,呼吸困難,発汗,全身倦怠感などで,胸部レントゲン写真では肺全体に散布性の粒状・網状影を呈するが,徐々に呼吸困難が進行する慢性型もある。診断は,原因抗原と思われる真菌を試験的に吸入させ,症状の発現を確かめたり,血清中の沈降抗体をみつければよい。治療は,原因抗原の除去と副腎皮質ホルモン療法である。洗浄,加熱,殺菌剤,紫外線灯などによって,空調施設や加湿器を絶えず清潔に保つことが予防につながる。類似語として,加湿器熱Monday sicknessがある。
執筆者:伊藤 新作
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報