労働審判(読み)ろうどうしんぱん

共同通信ニュース用語解説 「労働審判」の解説

労働審判

事業主個々の労働者の間で解雇賃金不払い、懲戒処分効力などの紛争を迅速に解決するための制度。2006年、全国の地裁で始まった。裁判官と、労働問題に専門的知識のある労働審判員2人による労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理し、調停を試みたり、判決に当たる審判を出したりする。審判から2週間以内に異議申し立てが無ければ確定し、和解と同じ効力を持つ。申し立てがあれば民事訴訟に移行する。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

知恵蔵 「労働審判」の解説

労働審判

解雇や給料未払いなど職場の争いごとを、訴訟よりも素早く解決するために2006年4月から導入された。裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種で、地裁に申し立てることができる。 労働者、使用者のそれぞれの専門家である労働審判員と、裁判官が務める審判官の計3人でつくる「労働審判委員会」が、トラブルが起きた会社と個人の双方の話を聞いて、原則3回以内の期日で決着を図る。 調停が成立しなかった場合は「解決案」として委員会が審判を示し、確定すれば裁判上の和解と同じ効力を持つ。当事者に異議があれば訴訟に移る。 最高裁によると、07年3月までの1年間に全国で1163件の申し立てがあった。手続きが終了したのは919件。半数近い454件が地位確認、247件が賃金など、71件が退職金をめぐる争いだった。 終了したうちの7割に当たる644件で調停が成立し、162件で解決案を示す審判が出た。審判の内容に異議があって訴訟に進んだケースなどを除くと、全体の8割以上が「解決」したことになる。 申し立てから終了までの期間をみると、7割に当たる655件が3カ月以内で済んでおり、ほとんどが3回以内の期日で収まった。裁判よりも迅速に進んでいるといえる。 企業の労務担当や、労働組合の幹部ら「現場」を知る専門家が審判員となることで、利用者だけでなく裁判官にもおおむね好評だ。ただ、書類作成などの手続きをする代理人を弁護士に頼むことで、争う金額が少額な割に費用がかかることなどが、今後の課題として挙げられている。

(岩田清隆 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android