精選版 日本国語大辞典 「解雇」の意味・読み・例文・類語
かい‐こ【解雇】
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使用者の一方的な意思表示によって労働契約を解消すること。解雇は、資本の蓄積過程に基礎づけられる。景気の変動に伴う企業の倒産や事業規模の縮小をはじめ、国際競争の激化に伴う事業所の閉鎖が解雇を呼び起こしてきた。解雇は、賃金所得の喪失を引き起こすことから、労働者の生存権の侵害を意味する。また使用者による労働力の選別や労働条件の抑制のてことして、労働者支配のうえでは中心的な役割を担っている。これらの影響は、日本における企業規模間の労働力移動が下向移動を主要な方向としていることから、とりわけて大きい。使用者の解雇の自由に制限を加えることが、労働組合の主要な課題の一つとして提起されたのは、このような背景においてである。
[三富紀敬]
西欧諸国では、解雇の規制に関する法制度が広く普及している。その法規定は、フランスの労働法典(1973年と75年に解雇規制法を挿入)、イギリスの雇用保護法(1975)、旧西ドイツの解雇制限法(1969)、イタリアの労働者憲章法(1970)などでなされている。このうちフランスでは、1968年5月の大闘争によって締結された「雇用保障に関する全国協定」を基礎に、73年には「期間の定めのない労働契約の解約に関する法律」(個別的解雇の規制。1973年法)が、75年には「経済的事由による解雇に関する法律」(集団的解雇の規制。1975年法)が制定された。このためとくに1975年法によると、「景気的または構造的な経済的理由」により30日の期間内に10人以上の労働者を解雇(集団的解雇)しようとする使用者は、従業員代表機関に対して、解雇の諸理由、解雇予定者数、関係職種、実施日程、解雇の回避、被解雇者数の削減、再就職のための手段の提供に関する措置を提示しつつ、解雇計画について諮問する義務を負っている。また、これには行政官庁の承認が必要とされ、使用者の申立て書には、解雇の諸理由をはじめ、解雇を回避し被解雇者数を減少させ、また従業員の再就職を容易にするために採用される措置などが記載されなければならない。さらに、事前の諮問を行わなかった使用者には、刑事上の制裁として解雇者1人につき1000フランから3000フランの罰金刑が科される。しかも、行政官庁は諮問手続の適合性、解雇理由の実質性、再就職および補償措置の十分性について判定するが、これへの手続違反に対しては、刑事上の制裁として解雇者1人につき先と同額の罰金刑が科される。このほか、民事上の制裁として、労働契約の乱用的な破棄を理由に労働者に対し損害賠償権の付与されることが規定され、また、解雇ののち1年間は行政官庁の許可なしには新規の採用を行いえないこととされている。
西欧諸国の解雇規制法も解雇を一般的に禁止しているわけではないが、従業員代表機関への諮問や行政官庁の承認を経ることから、解雇が社会問題になりやすく、また労働組合の反対運動も組織しやすいこと、刑事上、民事上の制裁と解雇後における新規採用の制限が、解雇を思いとどまらせ、もしくは規模を縮小する方向に作用することなどから、解雇への抑止的な効果を発揮している。このため使用者は、解雇規制の対象になる「期間の定めのない契約」を締結せず、主として「期間の定めのある契約」、パートタイム、臨時派遣契約の形態で労働者を採用する方向に、労働力管理の政策を変更しているといわれる。
[三富紀敬]
民法上は、期間の定めのない雇用契約はいつでも解約通告でき、その後2週間で雇用関係は終了するものと定めている(627条1項)。しかし、労働基準法(1947年制定)や労働組合法(1945年制定。現行法は49年改正法)では、このような解雇の自由に罰則付きで制約を課している。(1)労働者が療養のために休養する期間およびその終了後30日間、ならびに女子の産前産後各6週間の休業期間およびその後30日間における解雇の禁止(労働基準法19条)、(2)原則として少なくとも30日前の解雇予告、もしくは30日分以上の平均賃金の支払い義務(労働基準法20条)、(3)不当労働行為に該当する解雇の禁止(労働組合法7条4号)、(4)労働者が労働基準法違反の事実を行政官庁もしくは労働基準監督官に申告したことを事由とする解雇の禁止(労働基準法104条2項)、などがそれである。これらは、第二次世界大戦後の「民主化」の成果として、今日なお労働者保護の機能を果たしてはいるものの、明らかに大企業の野放図(のほうず)な「雇用調整」の規制を意図したものではない。このため日本では、解雇が企業もしくは事業所内だけで処理されやすく、「雇用調整」の一方的な進行を容認することになっている。また、解雇者に対する失業給付の期間延長が、一般的な権利としてではなく、公共職業安定所の行政指導による個別的な措置の枠内において実施される。
[三富紀敬]
『『季刊労働法』107号(1978・総合労働研究所)』▽『沼田稲次郎・青木宗也他編『労働法事典』(1979・労働旬報社)』▽『『日本労働法学会誌』55号(1980・総合労働研究所)』
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…広義には労働者の死亡以外の原因(一般に解雇を含む)で,広く労働関係が解消される場合のすべてを指す(例えば,労働基準法89条1項3号の就業規則の絶対的必要記載事項としての〈退職に関する事項〉にいう退職はこの意味で用いられている)。狭義には労働者の一方的意思表示によって労働関係を解消すること,すなわち辞職(ただしこの言葉は人事院規則では,公務員がみずからの意思により退職することをいい,依願退職ともいう)を意味し,使用者の一方的意思表示による労働関係の終了である解雇,さらには労使双方の合意に基づく労働関係の解消としての合意解約とは異なる。…
…(1)は,ある年齢まで働けば,企業はこれまでも賃金を払って役務(サービス)の対償を払うことは終わっているのに,さらに多額の退職金を払い,従業員の功労に謝意を示して老後の生活を保障する,と考える恩恵とみる立場である。(2)は,老朽従業員を若い従業員に代えるため,一定年齢を定めて解雇する制度とみる立場である。高年齢従業員の割合が増え,しかも技術革新・経営活動活性化の必要が強くなるにつれて,経営側は(1)より(2)の立場を強調し,生活については定年後の就業の場を提供・斡旋し,自立を援助するなどのことを行っている企業もある。…
※「解雇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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