日常語としては,前もって特に定めた日をさすが,訴訟法では,特別の意味をもつ。裁判所,当事者その他の関係人が,一定の場所(原則として裁判所の建物内)に会合して,訴訟行為を行う日時をいう。期日(とりわけ口頭弁論期日,公判期日)は,裁判所の面前において訴訟行為をし合い対論を行う機会を当事者に与える場を設定するものであって,当事者の主体的参加を通じて判決の内容を決定しようとする裁判理念がその背後にある。
(1)民事訴訟法では,重要な訴訟行為は期日において行う。その目的事項に応じて,口頭弁論期日,証拠調期日,判決言渡期日,準備手続期日,和解期日などとよぶ。適時に期日が開かれることは,迅速かつ適正な審理のために不可欠なので,期日の指定は,裁判長または期日を主宰する裁判官が職権で行う。弁論の集中という理想にかんがみ,期日と期日の間隔は短くしなければならない。期日は〈事件の呼上げ〉(事件を特定して開始を宣告すること)によって開始される(民事訴訟規則62条)。指定された期日がみだりに変更されては効率的な審理ができないので,期日の変更には厳しい段階的規制がある。第1回の準備手続期日や準備手続を経ない第1回口頭弁論期日は,当事者の合意があれば無条件に変更できる(民事訴訟法93条3項)が,続行期日の変更は顕著な事由がある場合にだけ許され,準備手続を経た口頭弁論期日の変更はやむをえない事由がなければならない(93条4項)。期日にはその目的からして関係人を呼び出さなければならない。呼出し状の送達,または出頭した者に対する期日の告知によるのが原則である。しかし,続行期日の場合(および簡易裁判所の場合)は相当と認める方法(通常郵便,電話など)による呼出しも許される。この場合には,期日の不遵守による不利益も課することはできない(94条2項)。
(2)刑事訴訟法上でも,その意義はほぼ同様である。公判期日をさすことが多い。公判期日には,被告人を召喚し,またその期日は検察官・弁護人等にあらかじめ通知する(刑事訴訟法273条)。公判期日の変更は当事者の意見を聞いて職権または請求により行う(276条。なお277条参照)。
執筆者:小島 武司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般には一定の日時をさす(たとえば民法398条の6第1項、手形法34条第2項)が、訴訟法上は裁判所、当事者その他の関係人が一定の場所に会合して訴訟行為をしあうための時間を意味する。民事訴訟における期日としては、口頭弁論期日、弁論準備手続期日、証拠調べ期日、判決言渡し期日、和解期日などが、刑事訴訟では公判期日などがある。
[本間義信]
民事訴訟における期日は、申立てまたは職権により裁判長またはその事件を担当する単独裁判官があらかじめ指定するが(民事訴訟法93条)、その際、場所、年月日、開始時を明示しなければならない。期日の呼出しは、裁判所書記官が呼出状を作成して当事者その他の関係人に送達し、当該事件について裁判所へ出頭している者に対しては告知またはその他相当と認める方法によって行う(同法94条)。期日は事件の呼上げにより開始される。なお、一度指定された期日は、顕著な事由がある場合に限り(最初の期日は当事者の合意がある場合にも)変更が許される(同法93条3項)。期日を開いても予定の事項をすることができずに期日を閉じた場合には期日の延期、その日に予定した事項が完了しなかった場合には期日の続行が行われる。
[本間義信]
刑事訴訟では、公判期日の指定、変更、召喚状の送達などにつき、被告人などの訴訟準備を保障するため、とくに規定が置かれている(刑事訴訟法273条以下、刑事訴訟規則178条の4など)。
[本間義信]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…法律上,〈期間の経過〉に一定の法律効果が与えられることが多い(時効,借地権の存続期間,控訴・上告期間など)。期間と区別すべきものに〈期日〉がある。期日も,一瞬ではなく,一定の時間的長さをもっているが,経過する時間の長さに焦点をおく観念ではなく,ある時点(期日)において法律上意義のある一定の行為またはできごとが行われるべきであるという点に焦点をおく概念である(弁済期日,口頭弁論期日,投票日など)。…
※「期日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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