改訂新版 世界大百科事典 「動物磁気説」の意味・わかりやすい解説
動物磁気説 (どうぶつじきせつ)
animal magnetism
F.A.メスマーの立てた学説で,メスメリズムmesmerismともいう。すなわち,人体はすべて宇宙に満ちているガスの一種である動物磁気の作用下にあり,体内においてこの磁気の不均衡が生ずると病気になるというものである。メスマーは最初ニュートンの万有引力の法則やケプラーの法則をもとに,惑星軌道を決定している遠心力や引力の身体器官に対する影響を主張していたが,後に天文学者ヘルMaximilian Hellの磁石による治療にヒントを得て動物磁気説を唱えた(1775)。パリでは風変りな治療室と器具であらゆる病気の治療を試みたが,医学界の承認を得るには至らなかった。暗示的効果によると思われるこのメスメリズムの実践には多分に香具師的な面があったが,これは後の催眠療法の端緒ともなっている。
執筆者:武正 建一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報