円運動のように固定点の周りを運動している物体が外向きに受ける力のこと。これは物体の慣性によるものであり、通常の力(その作用によって物体に加速度を生じさせる力)とは異なり、回転座標系で生じる見かけ上の力である。物体に作用し加速度を生じさせている外力(円運動の場合は向心力)に対する反作用と考えることもできる。半径rの円周上を速さv、または角速度ω(ω=v/r)で円運動を行っている質量mの物体に作用する遠心力は、大きさmv2/rまたはmrω2で、半径に沿って外向きである。これは、円運動を続けさせている力、すなわち向心力と大きさが同じで向きが逆である。
遠心力の存在は、回転座標系に乗ることによって日常しばしば感じられる。たとえば、遊園地にあるメリーゴーラウンド、ループ・コースターなどの回転運動を行う乗り物に乗ると、外側に強く引かれるように感ずる。これが遠心力である。遠心力を応用したものとしては遠心分離機や電気洗濯機の脱水機能などがある。
[阿部恭久]
円運動では,速さVが一定でも運動の方向がつねに変わるので,速度は円の内側へ向けて変化し続けている。このため半径Rで円運動をしている質量mの物体には,円の中心へ向かう大きさmV2/Rの力が作用している。この力を向心力centripetal forceまたは求心力という。回転の角速度をωとすればV=Rωであるから,向心力の大きさはmRω2とも表せる。糸の先に物体を結びつけて振り回すときには,糸がこの向心力を与えているが,一方,振り回している手は物体には大きさが向心力と等しく方向が逆の力が働いていて,それと糸の張力(向心力)がつり合って物体が静止しているように感ずる。この力を遠心力といい,物体といっしょに同じ角速度で回転している場合のみに感じられる力である。このように遠心力は,回転を静止のようにみなそうとするために感ずる見かけの力で,発車や停車のときに電車内で感ずる見かけの力と同じく,物体の慣性に起因する仮想的な力(慣性力という)の一種である。
→慣性抵抗
執筆者:小出 昭一郎
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… この回転座標系上でも運動法則が成り立っているとすれば,質点は静止しているのだから中心に向かう力と逆向きの大きさの同じ力が作用し,中心に向かう力を打ち消していると考える必要がある。この仮想的な力(慣性力)を遠心力と呼び,円の中心と反対向きでmω2rの大きさを持つことになる。回転座標系上で静止している質点をそれに固定した座標系からみる場合には,見かけの力として遠心力だけを考えればよいが,回転座標系上で運動している質点に対しては,理論上さらにもう一つの見かけの力を考える必要があり,この力を研究したフランスの物理学者G.G.コリオリにちなみコリオリの力と呼んでいる。…
… すなわち回転系においては力Fに対し見かけ上の力,と-mω×(ω×x)とが加わっていることがわかる。回転系でみたときの速度d′x/dtに関係する力がコリオリの力と呼ばれるものであり,また-mω×(ω×x)は遠心力である。
[解析力学における一般化座標]
質点の運動を記述するのには,その位置を表す変数と同時に速度または運動量が独立な変数として必要であるが,これは運動方程式が時間に関する2階の常微分方程式であることに起因している。…
※「遠心力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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