物体間につねに働く引力のことで、現在では重力という名称が用いられる場合が多い。1665年、ニュートンが惑星の運行を支配する力と地上での重力とを統一する理論として発見したものであり、相互の質量の積に比例し、距離の二乗に反比例する大きさをもつ。この力は電気力の場合などと異なり、すべての物に働き、またつねに引力であるという著しい特色をもっている。万有引力の名称は、その性質を形容したものである。
1915年になってアインシュタインは一般相対性理論を提唱し、万有引力の新しい理論となった。この理論は万有引力と慣性力の等価原理を基礎としている。慣性力とは加速度系において働く力で、遠心力などがその例である。この慣性力も実は「万有力」であり、アインシュタインは、この二つの万有力を同一のものとみなすことにより、これらの力は実は単なる座標系の選択に由来する仮想的な力とみなす理論を提唱した。ある点における万有引力は、適当な座標系をとればつねに無重力状態にできる。しかし、場所ごとの無重力状態となる座標系は互いに加速度運動をしている座標系となる。したがって、ある点での無重力系で別の点に着目すれば重力の作用している状態になっている。このような場所ごとに異なる無重力系となることを数学的に表現するためには、リーマン幾何学に従う曲がった空間の導入が必要となる。一般相対性理論は四次元リーマン空間の曲率の効果として万有引力を記述する見方を導入したものである。
さらに近年になり、素粒子間の相互作用に関するゲージ理論が成功し、その立場からの統一理論が試みられているが、その立場からみると一般相対性理論もゲージ理論の一種である。それも、時間・空間の座標に関する一般的性質に関する対称性に起因するゲージ理論である。このことが万物に作用する万有力の由来である。一般相対性理論での万有引力はかならずしも「引力」とは限らない。光速に比較して小さい速度で運動したり、回転していたりする物体による力が、たまたま引力であるにすぎない。
万有引力の量子力学的理論はまだ完成しておらず、他の力に比較しても格段にむずかしい問題をはらんでいることが認識されている。300年以上も前に発見された力のなかに、物質と時空に関する最大の謎(なぞ)が含まれていると考えられている。
[佐藤文隆]
質量をもつすべての物体の間に働くと考えられている引力。月や惑星の運動を説明するためにニュートンが導入した。質量m(kg)とm′(kg)の物体(正確には質点)がr(m)隔てて及ぼし合う万有引力の大きさは,
で与えられる。これを万有引力の法則といい,G=6.6720×10⁻11N・m2・kg⁻2は万有引力定数と呼ばれる定数である。Gがこのように小さいため,地上の物体相互間の万有引力は感知できないほど弱く,地球と地上の物体との間の万有引力をわれわれは重力(の主要部分)として感じている。万有引力は天体間の力の主役として,天文学ではきわめて重要である。アインシュタインは,一般相対性理論で,万有引力を時間空間の一種のゆがみに帰着させたが,彼が成功しなかった万有引力と他の諸力との統一場理論は,最近別の現代的な形で建設されかかっている。
→ゲージ理論 →相対性理論
執筆者:小出 昭一郎
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…〈rapport〉はラテン語の〈affinis(親和力)〉の訳語として使われた。その後ベリマンTorbern Olof Bergman(1735‐84)がさらに一般化した表を作り,ニュートン的万有引力をも包括する体系を考えたが,ゲーテはそれに刺激されて《親和力》(1809)を書いた。 このように物質,もしくは自然物に内蔵される力という概念は,より大きな文脈において,基本的には西欧ではプラトン主義の伝統に属するものであり,自然を動的に変化・展開せしめる原動力が自然物そのものに帰属する,という考え方に基づく。…
※「万有引力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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