日本大百科全書(ニッポニカ) 「勝ち組」の意味・わかりやすい解説
勝ち組
かちぐみ
第二次世界大戦での日本の敗戦を信じなかった、在ブラジル日本系移民の狂信グループ。70年以上に及ぶ日本からのブラジル移民の一世、二世は、生活の苦闘のなかで、「停止した昔の日本」のみをもち続け、辺境の地で正確な情報も得られないこともあって、なかには日本の敗戦を信じようとせず、日本の勝利を「信仰」する者もいた。これが「勝ち組」である。彼らは、日本の敗戦を信じる者たちを「負け組」と称して対立し、1946年(昭和21)、このグループの一派である「臣道連盟」が、オズワールド・クルースという田舎(いなか)町で負け組の家を爆破した。これがきっかけでブラジル住民や白人までを巻き込んだ暴動が起こった。暴動は4日間続き沈静化したが、以後も勝ち組の負け組に対するテロや暗殺が続き、ブラジル政府はこれらの日本人を国外に追放したりした。日本の敗戦を信じないわけではないが、いまなお勝ち組を守っている一世老人も少数はいる。
[梶 龍雄]
『高木俊朗著『狂信』(角川文庫)』