精選版 日本国語大辞典「田舎」の解説
い‐なか ゐ‥【田舎】
〘名〙
① 都会から離れた土地、地方。都以外の所。また、人家が少なく、へんぴな所。在郷。鄙(ひな)。
※書紀(720)垂仁二年一〇月(北野本訓)「黄牛(あめうじ)田器(たつはもの)を負て田舎(ヰナカ)に将往(ゆ)く」
※伊勢物語(10C前)五八「ゐなかなりければ、田刈らんとて」
② 地方にある生まれ故郷、または、親などの出身地。郷里。「連休にいなかへ帰る」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉六「田舎の叔母を訪はんとて」
③ (名詞の上に付けて接頭語のように用いる) 田舎でよくありそうなさま、野卑、下品、粗暴などのさまにいう語。
※古事談(1212‐15頃)二「布衣之時、似二田舎五位一」
④ 「いなかおたる(田舎御樽)」の略。
※御湯殿上日記‐文明一四年(1482)一一月二日「御みやけいなか一か」
⑤ 「いなかざけ(田舎酒)」の略。
※言継卿記‐天文一三年(1544)正月二九日「今朝広橋よりゐ中とて樽一」
⑥ 「いなかじるこ(田舎汁粉)」の略。
※明治世相百話(1936)〈山本笑月〉甘党随喜の名代汁粉「甘党の随喜した汁粉の味、〈略〉御膳、田舎、小倉、塩餡乃至は白餡の上品まで」
[語誌](1)①は、中古以前は、都から離れた土地をいい、たとえば「伊勢物語‐五八」の例は、平安京の外にある長岡をさす。類義語「ひな」は畿外の地をいうが、次第に古語となった。
(2)「ゐなか」は、「みやこ」の対として、蔑視されていたとは限らない。上代のいわゆる両貫貴族の本貫の地、すなわち生産を営む場をさす場合には侮蔑性は少なく、都会的洗練を経ないものとしては、次第に、蔑称の意識が強まり、その意味での数多くの複合語をつくる。
(3)中世では京都郊外よりさらに外の地、また単に地方の意にも使われたらしい。
(2)「ゐなか」は、「みやこ」の対として、蔑視されていたとは限らない。上代のいわゆる両貫貴族の本貫の地、すなわち生産を営む場をさす場合には侮蔑性は少なく、都会的洗練を経ないものとしては、次第に、蔑称の意識が強まり、その意味での数多くの複合語をつくる。
(3)中世では京都郊外よりさらに外の地、また単に地方の意にも使われたらしい。
でん‐しゃ【田舎】
〘名〙 (古くは「でんじゃ」とも) いなか。また、いなかの家。
※菅家文草(900頃)一一・吉祥院法華会願文「須下待二明年一、予帰中田舎上」
※中院本平家(13C前)七「くだし給て候し御琵琶をば、〈略〉いまはでんしゃのちりにまじへ」 〔史記‐蘇秦伝〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報