内科学 第10版 「医療の過誤可能性」の解説
医療の過誤可能性 (患者へのアプローチの基本)
1)本質的過誤可能性:
正しく診断する知識や方法が確定していない,いわば正解が明らかになっていないために起こる誤りである.たとえば,原因不明の難病の研究は,おもにこの過誤可能性を減らすことを目指しているととらえることができる.
2)偶然的過誤可能性:
正しい知識を採用しない,つまり正解を知らないために起こる誤りである.EBMはおもにこの過誤可能性を減らす営みといえよう.
3)必然的過誤可能性:
患者の個体差による不確実性であり,結果が正解どおりに一律にはならない,本質的なエラーであるという.テーラーメイド医療はこの過誤可能性を減らすものであろうし,単なる知識面だけではない能力が医師に特に求められるのは,この3番目の問題に対応する場面であろう. これらに加えて,いわゆる「ミス」による不確実性もある.実際の臨床現場では,これらのどれが関係しているのか,それさえわからないことも多い.診療上の判断,患者や家族への説明,そして不確実性への対策などを具体的に考える際に,このような視点が論点整理に役立つだろう.[大滝純司]
■文献
Bowen JL: Educational strategies to promote clinical diagnostic reasoning. NEJM, 355: 2217-2225, 2006.
Cole SA, Bird J 著,飯島克巳,佐々木将人訳:メディカルインタビュー−三つの機能モデルによるアプローチ 第2版,メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2003.
中川米造:過誤可能性.医学の不確実性,pp30-31, 日本評論社,東京,1996.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報