日本大百科全書(ニッポニカ) 「千鳥羹」の意味・わかりやすい解説
千鳥羹
ちどりかん
棹菓子(さおがし)の一種で、島根県安来(やすぎ)市の坂田眞月堂(さかたしんげつどう)の名代(なだい)菓子。眞月堂初代、仲蔵が松江藩御用菓子司三津屋惣七(みとやそうしち)に製菓法を学び、嘉永(かえい)年間(1848~1854)に創作した。備中(びっちゅう)(岡山県)特産の白小豆(あずき)を主材に用い、練り切り風に仕立てて、糖蜜(とうみつ)で煮た丹波大納言(たんばだいなごん)小豆を散らした、ぜいたくな棹物である。千鳥羹は羊かんではなく寒天は使用しない。菓子の姿は白浜に鳴き交うチドリを表現したものという。
千鳥羹の原形は松平不昧(ふまい)公好みの東雲(しののめ)羹で、暁(あかつき)(紅色)にチドリを表したものであった。これは藩主への献上菓子だったが、明治維新で絶えた。
[沢 史生]